2023年3月1日水曜日

Claudio Scimone / Albinoni 12 Concerti Op.10 (1979)

第二次世界大戦末期、1945年2月に連合国軍はドイツ東部の都市、ドレスデンへ大規模な空襲を行いました。この爆撃によって街のほとんどが破壊され、多くの市民が亡くっています。

この空襲によって失われたものの中に、国立図書館が所有していた多くのアルビノーニの直筆楽譜もありました。それでも、多くのアルビノーニの音楽を復元演奏している音楽家がいるわけで、クラウディオ・シモーネもその一人。

1934年生まれで、N.アーノンクールよりちょっと若く、J.E.ガーディナーよりは10歳くらい年上。1959年にイタリア・バロックを専門に演奏するイ・ソリスティ・ヴェネティを結成し活躍しました。イ・ソリスティ・ヴェネティは、イ・ムジチ合奏団と同じように、古楽系ではありません。シモーネは、学生教育にも力を注ぎ、2018年に亡くなっています。

アルビノーニの音楽は、ERATOレーベルにまとまった録音を残していますが、12曲でまとめてある協奏曲集である作品2、5、6、7、9、10などを聞くことができます。主役はヴァイオリンと一部がオーボエ。

ヴィヴァルディでも言えることですが、イタリア・バロックは基本的に宮廷音楽なので、明るくじめじめしていない。長々と演奏して国王を飽きさせたりしません。そして、ところどころで超絶技巧を聞かせて拍手喝采してもらうというのはお約束。

アルビノーニの音楽もヴィヴァルディと同時代の同じ空気を吸っていた人ですから、全般的にはどれも似たような雰囲気の急・緩・急の三楽章もので、それが12曲でひとまとめになっているので、第何番を聞いているのかよくわからなくなってしまいます。

ヴィヴァルディと比べてもしょうがないとは思いますが、あえて言うなら、やや音楽的。ヴィヴァルディほど忙しくはなかったのか、多少アンサンブルとしての完成度は上のような感じがします。その分、サーカス的なヴァイオリンはおとなしめ。

イ・ソリスティ・ヴェネティ創立時から、ヴァイオリンのコンサート・マスターを務めるのはピエロ・トーゾという人。多くの曲でソロを聞かせてくれますが、曲のせいか華々しくはないのですが、堅実で美しい響きは悪くありません。

そんな中で、作品10をここに選んだのは、12曲中3曲でヴァイオリン独奏がジュリアーノ・カルミニョーラだから。まだ若き28歳のカルミニョーラが、古楽に目覚める前の数少ない演奏が聴くことができます。

さすがに、すでにイタリア・バロックの重鎮となっていたシモーネの元での演奏ですから、好き勝手はできないようで、カルミニョーラのイメージからするとかなり型通りの安全運転の演奏です。