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2023年2月28日火曜日

Herbert von Karajan / Albinoni Adagio (1983)

クラシック音楽のヒット曲ランキングがあったら、知名度と共にベスト10に入りそうな一曲が「アルビノーニのアダージョ」という曲。

普段クラシックを聞かないという人でも、絶対に聞いたことがあるはず。何とも哀愁の漂うメロディは、一度聞けば心に残ること間違いなし。

そもそもトマゾ・アルビノーニは、1671年ヴェネチア生まれの、イタリア・バロックの作曲家です。宮廷ヴァイオリニストとして生計を立てつつ、主としてオペラとヴァイオリンを主役にした器楽曲の作曲で有名になりました。

帝王として君臨したカラヤンの演奏は有名。もちろんオーケストラはベルリン・フィル。荘厳な雰囲気の中、重低音を響かせるオルガンと一糸乱れぬ弦楽器が奏でる調べは、さすがとしか言いようがない。

ネオリアリズムの悲劇的な映画の主題歌でも聞いているような感じですが、カラヤンが自ら進んで選曲したとも思えない。80年代になって、いろいろとベルリン・フィルとの軋轢が表面化してきた頃ですから、どこか商業ベースでの妥協もあったのかもしれません。

このアルバムは、過去の録音からアダージョと呼ばれるゆったりした情感あふれる楽章をベスト・セレクトしたものですが、「アルビノーニのアダージョ」については、わざわざ録音したようです。

ところが・・・ここで今となっては大問題がある。イタリアの音楽学者であるレモ・ジャゾットが、図書館で埋もれていたアルビノーニの楽譜を発見したとして、1958年に出版したのがこの曲でした。美しいメロディは、オーソン・ウェルズの映画にも使われ、またたくまに世界中に知れ渡りました。

なんですが・・・アルビノーニが作曲したと思われていたこの曲、実は贋作だったんです。ジャゾットは自身をアルビノーニの原曲を少しいじった編曲者と言っていましたが、今では完全にジャゾットの創作によるものであることが判明しています。

ですから、20世紀までの録音では、作曲者はアルビノーニ、編曲者がジャゾットとクリジットされるのが普通で、当然カラヤン盤でもそうなっている。カラヤン先生が生きていたら、「恥をかかせおって」と顔を真っ赤にしていたかもしれません。