2023年2月20日月曜日

Fabio Biondi / Vivaldi Le quattro stagioni (1991)

おそらくもクラシック音楽をヴィバルディの「四季」から聞くようになったという人は多い。そのくらい有名。昭和人は、その場合ほぼ100%、イ・ムジチ合奏団のどれかのレコードから始まっています。イ・ムジチ合奏団は歴史が長く、何と昨年出た新譜でレコード、CD合わせて9種類もあるというから驚くほかありません。


ただし、悪く言えばイ・ムジチの「四季」は受験英語のような画一的なモダン楽器による演奏で、安心・安全な誰もが楽しめる演奏です。ヴィヴァルディは主として18世紀前半に活躍した人で、「四季」が出版されたのは1725年のこと。300年前の演奏は、もちろん録音があるわけではありませんが、少なくともそんな優等生的なものではなかったでしょう。

80年代以降、古楽の演奏が盛んになってから、当然ヴィヴァルディの音楽についても再構築の試みがいろいろな演奏家によって行われています。イタリア人のファビオ・ビオンディもその一人。

ビオンディは、古楽系のヴィヴァルディについては、おそらく第一人者と呼んで間違いない。90年頃から、自らの楽団エウロパ・ガランテを率いて、約30年間で協奏曲、ソナタ、宗教曲、歌劇などほぼ全分野を網羅しています。

1991年、そのキャリア初期に録音されたこのアルバムは、おそらくイ・ムジチしか知らなかった日本人にとっては青天の霹靂のような音楽だったと思います。これが四季? ヴィヴァルディが壊れた! いくら何でも好き勝手しすぎ・・・などなどの評が踊ったことは想像に難くありません。

てきぱきとした軽やかな進行の中で、自在に揺れ動くテンポ、際立つ楽器同士の絡み、目が眩むような速弾きなどによって、ドラマチックに四季を描き出しています。物凄い快速演奏のように思うかもしれませんが、全4曲12楽章で約40分。イムジチも43分くらいなので、実はそんなに違いは無いのに驚きます。

「四季」と言っているのは、「和声と創意の試み 作品8」と題された全12曲からなる協奏曲集に含まれる最初の4曲のこと。できるなら全曲セットで聞くことが望ましい。ビオンディは2000年に「四季」の採録を含めて全曲をCDにしています。