2023年2月15日水曜日

Giuliano Carmignola / Vivaldi Le quattro stagioni (1999)

イタリア・バロックで最大の有名人と言えばアントニオ・ヴィヴァルディ(1678-1741)。J.S.バッハよりちよっと年上ですが、ほぼ同時代の人。何しろ、クラシック音楽をとりたてて聞かない人でも、「ヴィバルディ」、「四季(Le quattro stagioni)」というのはたぶん知らないことは無い。

日本では1970年代に、イタリアのイ・ムジチ合奏団によるレコードがクラシックでは異例の大ヒットして、長らくバロック音楽とはこれだ!!、みたいな価値観を日本人に植え付けました。

当然、クラシック音楽を一般化する「功」と固定観念を作ってしまった「罪」の両面があったわけですが、自分も確かにイ・ムジチのレコードを持っていて、随分と親しんだ覚えがあります。

今の耳で聞くと、イ・ムジチの「四季」は、まさに優等生。モダン楽器の美しい響きによる、楽譜から丁寧に一つ一つの音を積み上げで完成した音楽は、間違いなく現代におけるクラシック音楽のあり方の典型なのかもしれません。

しかし、80年代以降に、その曲が作られた時代の実際に奏でられた音をできるだけ再現しようとする「古楽器」による「古楽」が盛んになり、イ・ムジチのようなモダンな端正な演奏は影をひそめるようになりました。

ジュリアーノ・カルミニョーラは、1951年生まれのイタリア人で、モダン・バイオリンの演奏もしますが、バロック・バイオリンの第一人者の一人として認知されています。特にその名を有名にしたのが「四季」の演奏でした。

カルミニョーラより前に、例えば古楽合奏集団、イル・ジアルディコ・アルモニコの「四季」も圧倒的なハイ・スピードで、それまでのイメージを崩した演奏を披露して愛好家を驚かせました。

しかし、カルミニョーラは、それだけではなく、楽章内で自由自在にテンポを揺らし、アドリブに近いような装飾音を混ぜ込んで、本当にこれが「四季」なのかと思わせるような圧倒的な演奏を聞かせてくれました。

やり過ぎという批判にさらされることもありますが、多くは好意的に迎えられ、時代の音楽はこうあるべきという一つの規範として名盤と呼ばれています。

大浴場でゆったりつかっているのもいいんですが、高温のサウナと水風呂のような刺激的な楽しみ方も温泉の醍醐味と思えば、カルミニョーラの「四季」から古楽の世界に飛び込むのも悪くはありません。