女流の古楽系ヴァイオリン奏者というと、思い出すのは今は60代になったヴィクトリア・ムローバ、50代ではレイチェル・ポッジャー、そしてもう少し若いイザベル・ファウストの三人がトップ・ランナーでしょうか。
この中で、筋金入りのピリオド奏者となると、ルネッサンス期の音楽からロマン派の一部まで、一番レパートリーの幅が広いポッジャーをあげざるをえない。ただ、主にCDをリリースしているのが、他の二人から比べるとややマイナーな「Channel Classics」というレーベルなのが残念な所。
CDベースの話になると、やはり商業的な側面を無視するわけにいかないので、ドイツ・グラモフォンのような巨大レコード会社からのリリースの方がより多くの人が耳にする機会があるのは事実。
もっとも、マイナーな会社の方が、実力さえあればより良好なコンテンツを取り上げてくれることもあります。アーティストにとっても本当に自分がやりたい音楽をしっかり作りこめる部分があるので、少なくともクラシック音楽の世界ではあなどれない部分が多い。
さて、当然ポッジャーもヴィヴァルディの「四季」は比較的最近CDとして演奏しています。一緒に演奏しているのは、結成されて15年くらいになる、比較的若い古楽演奏集団であるBrecon Baroqueです。
さて、この「四季」はどんなかと・・・予想通り、ではなく、あららら、比較的おとなしい演奏です。いかにも古楽奏法のきびきびした感じはあるのですが、ところどころで遊んでいる感じもします。
ただし、ビオンディやカルミニョーラのようなほとばしるエネルギーみたいな爽快感は感じられず、とりあえず合格点を取りに行った安定した演奏という印象です。男性と女性、あるいはイタリア人とイギリス人の違いみたいなところがあるかもしれません。
もちろん、随所にポッジャーのさすがという見せ場は出てくるのですが、ソロイストとオーケストラというよりは、7~8人程度の室内楽的なコンセプトなので、ポッジャーが全体の中に溶け込んでいるようなところがあります。もっとも合奏協奏曲というジャンルの曲なので、それもまた当然なのかもしれません。
つまり優れた技巧を持つ主席ヴァイオリン奏者のいる集団演奏としては、そこそこ古楽演奏として楽しめるのですが、ポッジャーの個性を感じたい向きには物足りないかもしれませんね。