いつも古楽を褒めたたえて推奨しているので、古楽至上主義のように思われてしまうかもしれませんが、モダン楽器による演奏を否定しているわけではありません。実際、古楽系に傾いたのはこの10年程度のことで、それまではまったく普通に意識せずに音楽を聴いていました。
ヴィヴァルディの超有名曲「四季」についても、初めての出会いは70年代に買ったレコード盤で、当然のことですが演奏者はイ・ムジチ合奏団。
イ・イムジチは、フェリックス・アーヨ(ヴァイオリン)が中心に1951年に結成され、アーヨ、ロベルト・ミケルッチ、サルヴァトーレ・アッカルドら歴代コンサート・マスターによって絶大な人気を博し、もう70周年を越えたというからすごいことです。
どうも記憶が定かではないのですが、レコードのジャケットは4つの四季を表す絵画が縦2横2でデザインされていたので、おそらく1970年版で独奏はミケルッチだろうと思います。何しろ驚いたのは、丸々楽譜が付属していたこと。
当然、当時も今もまともに楽譜がよめるわけではありませんが、まさにイ・ムジチの目指しているものがよくわかる。つまり、作曲者の意図を、楽譜通りに最大限忠実に再現するということ。もっとも、まだ古楽という言葉が定着するずっと前ですから、モダン楽器によるモダン奏法です。
何度も聞いた演奏ですから、自分の中ではベストではないけどスタンダードの位置づけであり、いろいろな「四季」を聞く時の比較対象のベースになっていることは間違いない。
CD時代になって、ヴィヴァルディの40枚組の安価なBOXセットをあまり考えずに購入しましたが、実はこの中の半分はイ・ムジチの演奏でした(残り半分はネグリの声楽曲)。ヴィヴァルディの器楽曲はほぼ全部がイ・ムジチで揃ってしまうという何ともありがたいセット。
ここに含まれる「四季」は、独奏ヴァイオリンは初代コンマスのアーヨなので1959年録音版です。古い音源ですが、初期のステレオ録音としては優秀で何ら問題ありません。古楽系に演奏を知ってしまうと、何ともオーソドックスというか、丁寧というか、教習車が路上練習をしているような感じ。
よく商品レヴューで、古楽系の演奏はエキセントリックで初心者にはお薦めしませんみたいなことがコメント欄に書かれていたりするんですが、それぞれに面白さは違うので必ずしもイ・ムジチが初心者向けということではありません。後は、いろいろ聞いて自分のお気に入りを見つければいいだけの話ですね。