2023年2月26日日曜日

Luca Fanfoni / Lolli Sonatas for Violin and Basso Continuo (2010)

イタリア・バロック音楽の主役は・・・なんと言ってもヴァイオリン、間違いない。ヘンデル、テレマン、J.S.バッハなどの活躍で18世紀以降はドイツに音楽界の主導権を取られ、独奏楽器としてはピアノが主役になり、大人数の管弦楽団が整備されていきます。

とは言え、音楽史の中で、17世紀まではイタリアが先進国として主導権を握っていたわけで、ストラディバリのような優れた弦楽器製作者にも支えられて、小編成の楽団を中心に華やかなヴァイオリン独奏者が活躍しました。

そしてこの時期、優れた技能で聴衆を喜ばせたヴァイオリン独奏者は、演奏者であると同時に自分を演出するための作曲者でもあったのです。ヴィヴァルディ以外は、一般にはあまり知られていませんが、それは技巧ありきの曲が音楽としてそれほどたいしたことが無かった・・・

という一面も否定できないのですが、実際、ヴィヴァルディですら大ヒットの「四季」を除けば、「同じ曲を600回書き直した」と陰口を叩かれてしまう有様です。でも、それを言ったらモーツァルト、ハイドンくらいまでは似たり寄ったりの話。バッハも、自分の気に入ったフレーズはかなり使いまわししているのは事実。

今回の主人公はアントニオ・ロリ。ヴィヴァルディとは入れ違いに頭角を現した人。当然、18世紀半ばの一目置かれたヴァイオリン奏者でした。彼はシュトゥットガルト宮廷管弦楽団のソロ ヴァイオリン奏者であり、イタリアだけでなく、ドイツ、ウィーン、パリ、オランダ、イタリア、さらにはロシアでも演奏会を開いています。

作曲家としての知名度はあまり高くはありませんが、数曲の協奏曲とソナタを出版しています。AmazonでCDを探しても数枚しか見つかりませんが、こういう時頼りになるのがイタリアのレコード会社のDynamicです。自国の作曲家を系統立てて整理・紹介する仕事を地道に行っていて、ロリについてもCD3枚組で全協奏曲、CD1枚でソナタを網羅しています。

ソナタ集は、ヴァイオリンの活躍がより鮮明にわかります。こんな高音出せるの? と言いたくなるほどの音で、ほぼ曲芸じみた演奏も出てきますが、言ってみれば軽いテーマがあって、その後にアドリブが延々と続くハード・パップ・ジャズみたいなもので、確かに曲としてのテーマはどうでもいい感じ。ひたすらヴァイオリンのアドリブを聴くと思えば、それはそれで楽しい。もうはっきり言って、伴奏のチェンバロとかチェロとかいなくてもかまいません。

ロカテッリのCDでも演奏するファンコーニは、ほぼ知られていませんが、60歳くらいで多くのコンクールで入賞した実績があり、イ・ムジチで活躍したサルヴァトーレ・アッカルドに師事していました。それにしても、超絶テクニックを持つ知られていないヴァイオリン奏者が、一体イタリアにはどんだけいるんだろうと思ってしまいます。