2024年2月9日金曜日

PHEVへの道 31 ハイブリッド・システム


ハイブリッド車の命・ハイブリッド・システムとはそもそも何ぞや、という話。

トヨタが初代プリウスで世界初の量産化をしてから、もう四半世紀たちました。カーボン・ニュートラルを目指す一つの手段として、今や世界中に広まり、完全電化を目指してさらなるステップに行こうとしている自動車産業ですが、現実にはまだまだハイブリッド車は選択肢として切り捨てることができません。

各社のハイブリッド・システムはいろいろな違いがあるので、大まかに勉強しておくことはそれなれに意味がありそうです。最も基本的な説明は、「ガソリンあるいはディーゼル・エンジンと電気的なモーターが協調して走る車」がハイブリッド・カーであり、そのための仕組みがハイブリッド・システムということになる。

まず、方式にはいろいろ種類があります。
1. パラレル式 (マイルド・ハイブリッド)
2. シリーズ式
3. シリーズパラレル式 (ストロング・ハイブリッド)
4. シリーズパラレル切替式

パラレルは、エンジンとモーターが同一軸にありモーターはあくまでもエンジンの補助として働くものです。シリーズ式は、エンジンを発電機として使い、その電気でモーター走行するもの。シリーズバラレル式は、エンジンとモーターの両方が、発電と駆動の両方を行うものとなります。

最も知られているのは、当然トヨタ車に搭載しているTHSシステムで、今は進化してTHS IIと呼ばれていますが、これはシリーズパラレルの代表的なシステム。トヨタはこの技術に関わる数千の特許を無償開放しましたが、最も複雑な仕組みになっているためかあまり後に続く企業が現れません。

低燃費を実現しやすい一方で、コストがかかり重量が増えやすい点が欠点と言えます。低負荷の状況ではBEV走行も可能で、搭載電池容量を増やして充電機能を付加すればPHEVにしやすいシステムです。

シリーズ式の代表が、日産のe-POWERです。基本的に走るのはモーターの仕事で、エンジンはあくまでも発電機であって駆動には関係しません。走る感覚は電欠の心配が無いBEVですから、加速性に優れますが高速域は苦手。しかし、今のところプラグイン・タイプのものが無く、またガソリン消費効率(いわゆる燃費)が必ずしも優れているわけではなく課題が多い。

ホンダが採用しているe:HEVが、シリーズパラレル切替式です。基本的にはエンジンで発電しモーターで駆動するシリーズ式ですが、必要に応じてエンジンと車軸を直結してエンジン走行もできる仕組みです。パラレル式は最もシステムがシンプルなので、スズキなどの軽自動車で採用されることが多い。

最近トヨタの新たなデュアルブースト・ハイブリッド・システムを搭載した車両が登場しています。これはターボエンジンをフロントモーターに直結して高出力を得ると同時に、搭載する電池の充電によりリア・モーターも駆動するというもので、THS IIよりも強力な出力が得られます。現在、クラウン・クロスオーバーRS、レクサスRX 500hに採用され、2.4Lエンジンで3.5Lエンジン並みのパワーを誇っています。

また、最新の話題として、トヨタは新たなハイブリッド・システムとして、マルチステージ・ハイブリッド・トランスミッション(MSHT)を開発しレクサスLCに搭載しました。これはFR車において、モーターの弱点とされる高速域での電気効率を引き上げることが目的で、高速巡行時の燃費向上を改善します。

BEV推進一辺倒に傾いていた昨今ですが、昨年からその方向性には疑問が投げかけられるようになりました。ハイブリッド車の意義があらためて見直され、システムのさらなる進化は止まらないようです。