一言でタイヤと言っても、自動車のタイヤは実はいろいろある。
目的別で、通常のある程度平坦な舗装された地面を走行することを前提としているのがノーマル・タイヤで、別名サマータイヤ。雪上を走行するためのスタッドと呼ばれる突起が埋め込まれたのが、スパイクタイヤですが、道路を傷めるので現在は緊急車両用のみに使われます。
一般向けの冬用はスタッドレスタイヤで、柔らかいゴムと深い溝で雪道走行を可能にします。スタッドレスタイヤは、乾燥した地面では制動力が落ち、また摩擦が強いためタイヤの寿命を縮めてしまいます。最近はオール・シーズン・タイヤと呼ばれるものもあり、軽い雪道であればそのまま走行が可能となっています。
特殊な目的用としては、山の中とか石ころだらけのような悪路のためのタイヤがオフロードタイヤと呼ばれるもので、溝が深く、表面がごつごつとしています。オフロードタイヤを少しマイルドにして、舗装道路にも使いやすくしたのがオールテレーン・タイヤ。
ランフラット・タイヤは、ゴムが固くしてあってパンクしてもしばらくは走り続けることが可能なもの。さらに、パンクした時、内部の粘着物が穴を自然に塞いでくれるセルフシール・タイヤ(シーリング・タイヤ)というのもあります。
乗り心地を良くするために静粛性とがたつきをおさえたのが、高価なコンフォート・タイヤ(プレミアム・タイヤ)です。グリップ性と走行性に重点を置いて、乗り心地よりも走りの良さを追求したのがスポーツ・タイヤ。
現代は車の燃費が重視されますが、タイヤによっても燃費は影響されます。エコタイヤと呼ばれる低燃費タイヤは、軽量化され転がり抵抗を低くして回転しやすい特徴があります。
構造的な分類としては、ほとんどのタイヤが採用しているのがラジアル構造。タイヤの骨格を形成するゴムで被覆したコード層の部分をカーカスと呼び、カーカスを放射状にしたのがラジアル構造、斜めにしたのがバイアス構造と呼びます。
中に空気で膨らませるチューブの有無で、チューブタイヤあるいはチューブレスタイヤがあります。チューブタイヤは衝撃に強く空気圧が下がっても走行が可能ですが、バーストのリスクがあり、現在はチューブレスが主流です。
タイヤのサイズ表記は、例えば写真の場合「205/65R16 95Q」となっています。最初の205はタイヤの幅、つまり厚みのmmで表す数字。大きければ大きいほど太いタイヤとなる。65はタイヤの扁平率で%表記。Rはラジアル構造を意味します。16はタイヤの内径、あるいはリム系と呼び、ホイールの大きさを示すインチ表記。
扁平率はタイヤ部分の断面高を断面幅で割ったもので、断面幅は奥行きのことで、断面高はタイヤの内径から外径までの長さ。一般的には、扁平率が少ないほどホイールからタイヤの外周までが短いものになります。流行りのインチアップは、タイヤの外径を変えずにより大きなホイールを使用することですが、この場合当然装着するタイヤの扁平率は下がります。
95はロード・インデックス(LI)と呼び、1本のタイヤが支えられる荷重負荷を示します。実際に支えられるkgは、LIが小さいと4倍程度、大きい場合は10倍以上になります。95では690kgを支えられるので、タイヤ4本で2760kgまでOKということになります。最後のQは速度記号で、一定条件下での最高速度km/hのこと。Lの120km/hから始まり、Qは160km/hで、Yになると300km/hです。
タイヤには空気圧という数字があり、最も規格通りの性能を発揮するために標準値がそれぞれのタイヤごとに決まっています。走っていると空気圧は漸減する傾向があり、支える荷重が減ってしまいます。また、接地面積が増えて摩擦を増やすので燃費は悪化します。高すぎる空気圧は、接地部分が中央に偏り寿命を縮めます。どちらもバーストのリスクを増やすので、適正値を維持することが重要になります。
最近人気のあるSUVは大きいので車体重量が大きい。また、PHEVやさらにBEVも搭載電池の重さが増えていますから、どうしてもタイヤはそれなりに大型化してしまいます。また、車体が重たくなる分、摩耗も多くなりタイヤ寿命が短くなる傾向があります。
プリウスPHEVの純正タイヤは195/50R19なので、ホイールは19インチでタイヤ直径は57.2cmです。ハリアー純正タイヤは225/55R19で、ホイールは同じ19インチでもタイヤ自体の直径は59.9cmで厚みも3cm増しています。クラウンスポーツPHEVは、235/45R21というさらにインチアップされた62.6cmの大口径タイヤが標準装備です。
以前は個人のカスタマイズ項目だったインチアップは、今では純正でも積極的に行われる傾向があります。インチアップすると、タイヤのクリップ力が向上(摩擦が増える)し、たわみが少なくなるので、ドライバーの操作へ反応しやすく「走っている」感覚が強くなり、またファッション性も高まります。
しかし、タイヤが薄くなることでクッション性が落ちて道路の凹凸を感じやすくなります。車内の静粛性は多少犠牲になるところです。また、設置面積が増えるので、摩擦が増えて燃費は悪化しやすくなります。車の特性として、どのようなタイヤが使われているのかも、ある程度は車選びの考慮すべきポイントとして忘れてはいけないところです。