2024年2月17日土曜日

PHEVへの道 37 あらためてカーボン・ニュートラル


せっかくなので、カーボン・ニュートラル(Carbon Neutrality)について、もう少し深堀して勉強してみます。

カーボン・ニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること。温室効果は太陽が発した赤外線が、大気に蓄積され地球を温めることで、温室効果をもたらす気体として二酸化炭素、メタン、フロンなどがあります。そして、実は水蒸気も量的には大きな割合を占めています。特に二酸化炭素(CO2)は、空気中の0.04%にすぎませんが、最も温室効果を高めると考えられています。

何故、カーボン・ニュートラルが大事なのか?

昨今の夏の暑さで実感できることですが、まさに地球の温暖化が進んでいることが大問題になっています。本来の温室効果では地球の平均気温は14゚cに保たれていますが、温室効果が無ければ温度は-19゚cになると言われていています。しかし、18世紀なかばの産業革命以後、人間が多くの化石燃料を消費するようになり、その結果CO2が排出され、大気中のCO2は40%増加したと考えられています。

150年ほど前と比べて世界の平均気温は0.85゚c、特に北極圏では4゚c以上上昇しています。様々な対策が取られたとしても、21世紀末には最大さらに4.8゚cの上昇が見込まれています。気温上昇は、大気中の水蒸気量の増加、海水温上昇による海水体積が増大、また氷河が溶け出すことなどによって、世界の海面水位は最大80cm(数mという意見もあります)ほど上昇すると予測されています。これは人間が自らの手で、地球を人間が居住できない惑星にしてしまうという恐ろしい近未来像なのです。

先にCO2吸収量を増やすことについて考えましょう。植物は光合成の過程でCO2を吸収し、酸素O2を排出します。吸収量の低下は、人間が居住地を求めて緑地を切り崩したことが大きな要因として挙げられています。従って、適切な緑地化が重要であることは明らかです。

例えば樹齢40年のスギが密生する林は、1ヘクタール当たり9t弱のCO2を1年間で吸収するといわれています。日本の1世帯が1年間に排出する平均CO2は3.7tで、約5000万世帯ありますので、排出されるCO2の総量は1億8500万t。日本の国土のスギ林の面積は444万ヘクタールで、年間4000万tのCO2を吸収しますので、カーボン・ニュートラルの実現には今の4倍以上の面積が必要です。しかし、樹を育てるには時間がかかり、また増加する人口を抑制することは困難です。

もちろん、そんな簡単な計算ですませられるわけではありませんが、吸収量だけを増大させて解決することは不可能。となると、排出量を削減することの重要性がより叫ばれるのは当然のことです。

では、CO2排出は主にどこで起こっているのか。約40%を占め最も主要な原因となっているのは、火力発電所などのエネルギー転換部門です。日本では電力の7割が火力発電に依存しています。CO2排出が無い自然エネルギーに頼る水力、太陽光、風力、地熱などの発電は2割に届きません。また原子力は現状で最も有力なCO2排出のない発電方法ですが、日本では6%にとどまっています。

化石燃料を消費する火力発電は、1kWh発電するために415~867gのCO2を排出します。電気自動車に充電するために6kwで8時間かけて充電したとすると、発電所では約42kgのCO2を排出させたことになります。一般的なBEVが500km走れるとすると、発電所で発生するCO2は84g/kmで、平均的なガソリン車の160g/kmの半分くらいとなります。

次にCO2排出の多いのは、25%を占める産業部門です。その中の50%は鉄鋼関係であり、20%が化学工業です。ほとんどの工業製品、特に日本では自動車産業はその中核を占めていると言っても過言ではありません。ガソリン車を作るのに比べると、電気自動車の製造は2倍のCO2排出をするという試算があります。

そして、次にCO2排出が多いのが運輸部門で約20%を占めます。当然飛行機、鉄道以上に数が多く最も重要な要素になるのが自動車なのです。従って、CO2排出の原因である化石燃料を用いた内燃機関(エンジン)を排除していくことが急務とされ、そのための方策の一つとしてBEVの普及が注目されました。

また、削減だけでなく排出されたCO2を回収して有効活用していく「カーボン・リサイクル」も研究されていて、2030年頃を目途に製品化されていく可能性が出てきています。トヨタ自動車はカーボン・ニュートラルの次の目標として、CO2排出を「減らす」から「ゼロ・エミッション(CO2を出さない)」を企業理念として掲げるようになりました。

いずれにしても、様々な意見がありますが、日本を含めて世界中の多くの国が、遅くとも今世紀半ばまでにはカーボン・ニュートラルを実現することを目標にしているわけですから、一般人である自分たちも受動的に待っているだけではなく、出来ること(例えば省エネ)から能動的なアクションを起こすことが重要ということです。