2024年2月15日木曜日

PHEVへの道 35 冬にBEVはどれだけ走れるか


北欧のノルウェイでは、電気自動車(BEV)の普及が、新車販売の80%におよぶBEV先進国です。冬のノルウェイで、BEVにとって最大の敵は寒さ。気温の低下による電池性能の劣化は、BEVにとって生命線に関わる問題です。

そのノルウェイでは、この数年BEVがしっかり性能を示しているのかわかりやすいEL Prixと呼ぶテストを夏と冬に行っています。主催しているのはノルウェイ自動車協会。方法はシンプルで、1回の満充電での最大航続距離がどれほどになるかを測るというもの。

コースはオスロからスタートして北上し、ドンボースから再びオスロに戻るというもので、最大標高差は1000mもあります。2024年1月に最新のテストが行われましたが、何しろこの時期のノルウェイの気温は-11~4゚cで、走るのはほとんどが雪道という、BEVにとっては最悪のコンディション。参加したすべての車種は、温度計で実測して室内を21゚cに保ちます。

最大航続距離として実際の結果と比較するのは、各メーカーが公表している車のWLTPモードによる充電電力使用時走行距離です。WLTPモードとは、「国際調和排出ガス・燃費試験方法」という実際の走行性能に近い評価を可能とする世界基準のもので、日本ではまだ義務化はされていませんが、現在ではグローバルな販売を目指す車種では必須のものとなっています。

参加した日本勢の結果を確認してみます。まずトヨタのbZ4X。WLTPで460kmですが、実際は314kmで、147km減って達成率は68%でした。日産アリヤはWLTPで498kmですが、実際は369kmで、129km減って達成率は74%でした。BEVの寒冷地の性能低下としては、3割減は平均的な結果ですが、やはり寒さによる落ち込みは無視できないレベルと言えそうです。

BMWのi5は達成率は88%、ベンツのEQE SUVは81%で、せめてこのくらいの成績は出してほしい。もっともスウェーデンが誇るメーカーであるボルボですらC40が達成率69%なので、高望みはできないところ。

最も売れているBEVはどうか? テスラ Model3が参加し、以前のテストでは連覇しさすがの存在感です。ところが今回は、WLTPで629kmに対して、実際は430kmで、184km減って達成率は70%という平凡な結果です。ライバルのBYDから小型のDolphinが参加して、WLTPで427km、実際は339kmで、88km減って達成率は79%でテスラを上回りました。

ところが、驚異的な成績を叩き出したのは、ほとんど無名の中国の新しいメーカーである高合汽車のHiPhi ZというスポーツカータイプのBEV。WLTPで552kmで、実際にも522kmを走り、減少はわずか33kmで達成率は95%です。

車選びはこれらの性能だけで決めるものではありませんが、BEVについては最も気になるポイントが航続距離であることは間違いなく、留意すべきポイントになります。しっかりとチェックした方がよさそうですが、日本ではここまで寒い場所は限定的で、少なくとも首都圏ではあまり神経質にならなくても良いとは思います。