2025年2月5日水曜日

洋菓子店コアンドル (2011)

悪い映画ではないですけど、ほとんど話題にならなかったような・・・それもそのはず。何とも気の毒だったのは、公開が2011年2月。すぐに東日本大震災が発生し、日本中が映画どころじゃなくなりました。監督の深川栄洋にとっても、主演した蒼井優にとっても残念な結果に終わったのではないでしょうか。

鹿児島弁なまりのまま上京してきた臼場なつめ(蒼井優)は、依子ウィルソン(戸田恵子)がオーナーバティシエを務める評判の洋菓子店「パティスリー・コアンドル」を訪ねます。店は、連絡を取り合ってきた彼氏の勤め先だったのですが、彼氏は早々に退職してしまい行方は誰も知らないらしい。多少はケーキ作りの心得があったなつめは、困り果てて依子に頼み込んで店においてもらうことになります。

きちっとした仕事をする先輩の佐藤マリコ(江口のり子)と張り合うものの、実力差は歴然としていて怒られてばかり。それでも、真面目に勉強するなつめは、少しずつ依子からも信頼されるようになっていきます。

しかし、味にうるさい店のお得意様の芳川夫人(加賀まりこ)に、依子から自分のケーキを作って出すように言われますが、芳川さんは怪訝な顔になるだけ。なんとか探し当てた彼氏の所に行くと、すでに別の女とくっついていちゃいちゃしているのです。かつては有名なパティシエで今は引退して評論家になっている十村遼太郎(江口洋介)にも、自作をけちょんけちょんに言われてしまいます。

そんな時、依子は外交の晩餐会の仕事を依頼されますが、直前に病に倒れてしまうのです。晩餐会に穴をあけるわけにいかず、そもそも店を休業するのも大変なことになってしまいます。なつめは、十村を説得して協力してもらい何とか晩餐会を乗り切ろうと奔走するのでした。

まぁ、お仕事ムービーとしてはあるあるの展開ではありますが、登場人物のキャラが立っていて、それぞれの心情も理解しやすい作りなので、共感しやすく素直に応援したくなる出来です。不器用だけど一生懸命まっすぐというこの手の役柄は、蒼井優は得意なのかもしれません。

最終的に十村が活躍するのですが、引退した理由などがわかるのは後半なので、もう少し頭から絡ませせてもよかったのではないかとも思います。なつめと対照的なマリコを演じる江口のり子も、さすがという存在感で、嫌みな役どころなのに憎めません。

傑作とは言えませんが、押さえるところをしっかりとわきまえた良作として、機会があれば見ても損しない映画の一つだと思います。