2012年に始まった、生意気な娘に毎日キャラ弁を作って対抗する母親が綴る「kaori(ttkk)の嫌がらせのためだけのお弁当ブログ」というのがありまして、大好評となってエッセイとして出版されました。これを原作として映画化したのは、監督・脚本の塚本連平。
八丈島に住む持丸かおり(篠原涼子)は、若葉(松井玲奈)と双葉(芳根京子)の二人の娘がいて、夫はこどもが小さいうちに亡くしていました。昼も夜も掛け持ちの仕事をして家計を支えていましたが、次女の双葉が高校生になるころから反抗期で口も利かなくなり、たまに言うのも「うざい」の一言だけ。
かおりは、それならと毎日の弁当を「うざい」キャラ弁にしてやると決意するのです。双葉の弁当はクラスでも話題になりますが、双葉はいっこうに態度を改める気配が無い。気がつくと、双葉は高校3年生となり、卒業後の進路を決めなければならないのですが、何をやりたいのか思いつかない。
幼馴染のちょっと気がある男子がコンクールに出るため本土に行くというので、双葉はついにかおりにキャラ弁の作り方を教わり、「頑張れ」のメッセージを伝えようとしますが、相手にはすでに彼女がいました。また最初の就職試験の結果も不合格となり、かおりが「無駄な事なんて何もない」と書いた弁当を捨ててしまうのです。
やっと都内の食品会社への就職が決まり、卒業までわずかとなったある日、かおりは全力で最後までキャラ弁作りに力をこめるのでしたが、過労がたたって倒れてしまうのでした。
ゆったりと時間が流れるような間を持った映画ですが、実は3年間の話。そんなにせかせかした雰囲気が無いのは、舞台の八丈島というのも関係あるかもしれませんが、一番は母娘の静かな戦いのせい。
ただし、少しずつただの戦いがキャラ弁を通した会話に代わっていくところは、しっかりと盛り込まれているところが作り方が上手なところでしょう。冷凍食品詰めまくり弁当のお母さんだって、毎日弁当を作ることは大変なことで、多くのお母さんにはしっかりと突き刺さる話だと思います。
話のアクセントとして対照的なシングル・ファーザー役の佐藤隆太が登場しますが、キャラ弁の作り方やそこに込める気持ちをかおりが伝えることで、本来口に出さないところが自然と解説されるようになっています。
これで物語は終わり・・・と見せかけてスタッフロールが登場すると、かおりが「まだ終わらない」といって続くのはユーモアとしてはあまりうまい方法ではないし、それも2回出てくるのは感心しません。とは言っても、そんなのは些細な事で、最後の巨大弁当は泣けること請け合いです。