タイトルだけ聞くと、何かクライム・サスペンスかスリラーか、はたまたホラーかといろいろ思いめぐらせてしまいますが、なんと実態はシチュエーション・コメディです。日本テレビの2時間枠で放送されたスペシャル・ドラマで、脚本は注目のバカリズム。バカリズムは、一度はまると抜け出せない魅力がたくさんあります。
家事代行会社スレーヌの清掃スタッフの田中亜希子(菊地凛子)、調理スタッフの小川恵(平岩紙)は、会社に対するいろいろな不満がたまり意気投合します。アイドルから転身して成功者となった社長の藤崎奈津美(白石麻衣)が、脱税して何億ものタンス預金を隠しているらしいという噂に飛びつきます。知り合いの江藤香奈恵(吉田羊)を、推理小説好きという理由で仲間に引き入れ、3人で合鍵をひそかに作り、奈津美の自宅マンションへ侵入することにしました。
無事に部屋に入って物色してみたものの、どこにもタンス預金など見当たらない。しかたがないので帰ることにしますが、帰り道で亜希子が「このまま帰るとただの不法侵入者になってしまう。せっかくだから掃除をしたい」と言い出します。恵も「冷蔵庫の余りものが気になったので料理を作っておきたい」と同調し、3人は再びマンションへ。
すると、クローゼットの奥に「本物の泥棒」重松(池松壮亮)発見します。重松は3人が一度引き上げた後で泥棒に入ったものの、3人が再び現れたため隠れていたのです。しかも、そこへハワイに出かけたはずの奈津美が帰ってきてしまいます。
どうにも誤魔化しきれなくなった亜希子と恵は、しかたがなく正直に白状します。すると奈津美は、部屋をきれいにしてくれたし、料理も作ってくれた、そして泥棒もまだ何も盗んでいないからと警察には言わないでおくということになり、2人と重松は心の広い奈津美に感謝して部屋を出るのでした。
マンションのエントランスまで降りたところで、香奈恵がいないことに気がつく3人。再び奈津美の部屋に戻ります。すると、何と香奈恵が奈津美にナイフを向けて殺そうとしているのです。香奈恵は離婚した夫と奈津美が楽しそうにしている写真を発見し、奈津美が夫の不倫相手であったことが判明して逆上していたのです。しかも、どこから登場したのか、マンションのコンシェルジェである毛利(角田晃広)が突然現れ、香奈恵を取り押さえたのでした。
もう、平凡な日常のあるあるみたいなクスっと笑うようなところから、どんどんエスカレートして次から次へと偶然に偶然が重なる奇跡のような展開の見事なところは素晴らしすぎます。まさに「バカリズムイズム」とでも言うような斬新なバカバカしさが炸裂しています。
ほとんどがマンションの一室で起こる出来事なので、舞台向けのようなストーリーですが、部屋を出たり入ったりの動きの多さがマンネリを防いでいて、絶妙なアクセントになっています。また、これ以上繰り返すと、さすがにどうかと思うところで、一気にカタルシスを迎えるのも、引き際がよくわかっていると感じるところ。
とはいえ、この後にさらなるどんでん返しが用意されていて、天才バカリズムの面目躍如というところ。バカリズム常連の出演者も、バカリズムを本当に良く理解しているのだろうと思います。