堀田あけみが、高校1年生で発表した「1980アイコ十六歳」は、当時の高校生のいろいろな悩みなど的確に著わされていて、多くの共感をよび賞も取りました。それを大林宜彦監督が製作総指揮となって、デヴューとなる今関あきよしに監督をさせました。
名古屋市内の高校1年生、三田アイコ(富田靖子)は、さばさばとした明るく振る舞いでともだちも多く、楽しく学校生活を送っていました。しかし、いわゆる「ぶりっ子」の紅子だけは苦手。
所属する弓道部の夏の合宿に参加したものの、初めて矢を射るアイコはなかなか的に当てられません。中学の時に付き合っていたアイツが、最近バイクに乗り出したらしいと聞いたことも気になっています。
弓道部の顧問に新任の島崎愛子先生(紺野美沙子)が着任しますが、早速紅子が取り入る様子にイライラします。ある日、アイコは思いつめた様子の島崎先生が男性と帰っていくのを見てしまいます。翌日、島崎先生が自殺しようとして入院したという話に、生徒たちは誰もがショックを受ける。
騒然とするクラスで、アイコは生きること訴え、初めて紅子とも気持ちが通じたのです。親友のゴンベと帰る途中、アイコは暴走族が通りを好き勝手に走り回っているところに出くわします。その一団の中にアイツがいて、彼は運転をしくじりアイコの目の前で死んでしまうのでした。
呆然として帰宅したアイコは、母親の胸にすがりついて泣くしかありませんでした。翌日からまた日常が戻り、ともだちたちがアイコにてを振ってきます。アイコも手を振り返すのでした。
主演の富田靖子は当時中学3年生で、オーディションで選ばれてこれがデヴュー作となりました。ともだちの一人は、同じくこれがデヴューの松下由樹が出演しています。アイコの母親は藤田弓子、父親は犬塚弘です。
当時、すごい女優が登場したと富田靖子が大評判になったのを覚えています。初監督の今関あきよしとしてはなかなか映画的にうまく作り上げた感じはわかります。例えば、島崎先生の抱えている「生き辛さ」を、上からの傘の動きだけで表現したのは秀逸です。ただし、内容的には、結局何だったのかよくわかりませんでした。
生きることの大切さを表現したいのでしょうが、明るいキャラの主人公の周りに、やたらといろいろな「死」がつきまとう・・・という映画全体の雰囲気との不自然なギャップみたいなものを感じてしまいます。
原因の一つは、ほとんどの生徒役がド新人なので、台詞がいまいち頭に入ってこないというのがあります。もっとも、名優ばかりではリアリティが乏しくなってしまうかもしれませんけど。
もう一つは、一つ一つのエピソードのつながり感がよくわからない。感性がないと言われてしまえばそれまでなんですけど、「騒然とするクラスで、アイコは生きること訴え・・・」というところも、結局何を言いたかったのかよくわかりませんでした。
そんなわけで、新人の紹介映画としてはそれなりなんで、富田靖子が初めて世に出たというだけと感じてしまいました。御免なさい。