芸人バカリズムが、銀行員のOLの立場で、架空の日々の様子をブログ形式で書いた小説が原作。バカリズム自ら脚本にして、なおかつバカリズムがそのままOLとして登場するという異色のドラマです。監督はバカリズムと親交が深い住田崇。
もともとは2017年に放送された1話30分全10話のテレビ・ドラマですが、劇場場は単なる総集編ではなく、似たような話だけどビミョーに異なったり、まったく新たなエピソードが盛り込まれてテレビ版を知らなくても、また知っていればより楽しめる作りになっています。
みさと銀行の練馬支店に勤務するのは、6年目の「私」(バカリズム)、私と同期の真紀(夏帆)、8年目で姉御肌の小峰(臼田あさ美)、10年目でのんびりした酒木(山田真歩)、そしてノウハウが未熟な後輩の紗英(佐藤玲)たちです。
彼女たちは上司の顔色をうかがいつつも、仕事はそつなくこなす毎日ですが、更衣室に戻ると本音トークに花が咲きます。それは上司の悪口だったり、給湯室のスポンジの使い方だったり、駅前の新規開店のイタリア料理店の話だったり、それはもうごくごく普通のことばかり。
映画版では、怖い小野寺課長(坂井真紀)、韓国との交換交流でやってきたソヨン(シム・ウンギョン)、「私」の高校の同級生のリエ(志田未来)などが加わり、話の舞台がより広がっています。
テレビドラマでも映画でも、こののりで進行していくので、大事件が起こるようなことはありません。それでも、いかにもOLあるある的な些細なストーリーが妙にうける。最初はバカリズムが女性の中に混ざって、そのままの姿で登場することに違和感を感じますが、不思議とだんだん慣れてしまいます。
そして、実はテレビでも映画でも、「私」は最後には消えてしまう。消えてもOLたちは、まったく問題なくいつもの生活を続けるのです。名前のない「私」は、あくまでもバカリズムの妄想の産物であり、OLたちからすれば幻みたいなもの。「私」が消えた後には、OL達を冷静に見つめる「男性」であるバカリズムがいるだけなのです。
喫茶店で日がな一日OL達を観察し続けていたのかと思うくらい、バカリズムの笑いを抽出する観察眼がすごい。直接ギャグを飛ばすわけではなく、日常にいくらでも転がっているクスっとしたくなる瞬間を多角的に描くのは、まさにバカリズムの真骨頂と言えそうです。