なんで、こんな医者が当直バイトしている病院に救急車が来るんでしょうね。いわゆる老人病院ですよ。すぐに検査なんてできません。レントゲンだってとれません。
でも、ベッドが空いているわけですよ。あ~、何もなければいいなぁ、と思いつつ当直荷物をとくわけです。今回は、ほどなく電話です、やっぱり。バイト料をいただいて、何とか生きていられる身としては極力受ける覚悟はできていますが、さて、どんなですかね。
何々、老人施設で意識不明で倒れていたおばあさんですと。この「意識不明」というのが、一番困るわけで、患者さんはここが痛いと自分で説明してくれません。
それで、血圧はOK、糖尿病があるんですか。じゃ、低血糖性昏睡かな、血糖値はすぐ測れる小道具があるので、まぁいいか。じゃ、どうぞ。というわけで、ピーポーピーポー到着です。
確かに意識障害、反応らしきものがありません。早速、血糖値チェック。あれ、異常じゃないの? さて、困った。眼球は両方右をにらんでいるよ。手足は動くような動かないような。
こりゃ、CT検査をするしかないでしょう。レントゲン技師さんに何とか連絡してもらうと、来てくれるとのこと。いゃー、助かります。まぁ、出血でなければ、なるようにしかならないみたいなところがありますから。
さて、小一時間して技師さん到着。CT検査開始。一枚ずつ頭の下の方から輪切りした絵が出てきます。脳硬塞ですかねぇ、あまり神経症状もはっきりしないんで、なんてのんきなことを言っていると、何枚目かで白いものが。
う?
おや?
あれ?
出血だぁ~。
それもけっこう広がっているじゃないですか。Dr.Flickerのブログの話が頭をよぎります。幸い、この病院は「一晩入院ですから」なんて怖いことは言われません。
すぐに近くの大学病院に連絡しました。救急車を呼んで、患者さんを乗せて見送ると仕事は完了です(これは正しい救急車の使い方です)。今年お医者さんになった皆さん、お年寄りは教科書通りの症状をだすとは限りませんよ。
そういえば、結局、ベッドは空いたままなので、さらに次の救急依頼にびくびくし続けるのでした。