2008年6月28日土曜日

せいぶつがくてき製剤

生物学的製剤と呼ばれる薬品は、関節リウマチをはじめとした炎症性疾患と呼ばれる病気の治療薬として、まさに時代の寵児然としています。

主だったリウマチ関連の学会での発表も、この数年は大多数が生物学的製剤に絡んだものであり、当然新刊書籍もこれらの薬剤を中心としたものばかりが目立っています。各製薬会社はシェア争いにしのぎを削り、さらに新しい製剤の開発が進められています。

患者さんにとっては、もちろん悪いことではありません。ただし薬の値段が問題。月平均にすると、いくつかある薬のいずれにしても自己負担3割の方で3~4万円もかかります。

国保の方(一般的には個人事業主)は、高額療養費制度を利用できる額にかかりません。社保の方(一般的には会社勤めの方)は、加入している保険組合によっては月の自己負担の限度額がそれ以下のことがありますので、必ず問い合わせておくことをお勧めします。

最近、新しく認可されたのはアボット=エーザイのヒュミラと中外製薬のアクテムラの2種類。ヒュミラは先行している田辺三菱のレミケードと同様の機序による薬ですが、レミケードが点滴で行うのに対して、こちらは皮下注射で投与可能であるところが一番の売りでしょうか。

安全性としては、レミケードでほぼ実証済みみたいなところがありますので、比較的安心して使えそうです。また、皮下注射が使いやすいことは先行するワイス=武田のエンブレルで証明されました。

一方のアクテムラは、これまでにはないまったく別のターゲットで効果を出します。そのため、どのような副作用が出るのか、多少不明な点があります。

また薬そのものの効果として従来使われている炎症の指標、つまりリウマチの病気の勢いを判定する検査項目が、病勢にかかわらず陰性化してしまうことから副作用の発見が難しくなることが心配されています。しかし、ターゲットが異なるため、他の製剤に無効な患者さんでも効果が出ることが期待されるので、今後が楽しみです。

さて、このような副作用をたいへんに心配する新薬は、市販されても厚生労働省への全例登録というシステムが定着しています。これはより安全性と有効性を確認するという意味で悪くはないのですが、実質的には治験(市販される前の治療実験)の続きみたいなもので、まだ完全にオープンに使用できるわけではありません。

一番手のレミケードでは、大きな制限はありませんでした。二番手のエンブレルはリウマチ専門医限定で行われました。そして、新しいヒュミラは学会の認定した教育施設限定となっています。

ですから、うちのような小さなクリニックでは当然使えないわけです。まぁ、同様のレミケードがあるわけですから、特に困ることはありません。

逆にびっくりしたのは、アクテムラの使用施設としてうちクリニックにOKがでたこと。リウマチ専門医で、生物学的製剤の使用実績によって可否がきまるようです。アクテムラは点滴で行うため、点滴をする場所や緊急時の連携医療機関の有無などが考慮されるようです。

ただし、アクテムラはまったく新薬であり、適応は慎重にされるべきであり、うちのようなクリニックではいきなりどんどん使うというわけにはいきません。おそらく3ヶ月程度で最初の全例登録の結果報告がまとまることでしょうから、それを見て安全性などを確認してからが使いどきではないかと考えています。

実際、この薬についての主な文献は開発者のグループのものばかりですから、もう少しいろいろな施設からの報告を知りたいところです。