リウマチの手の問題は、けっこう解決するのは大変なのです。自分で言うのもなんですが、実際に手術をする医者も少なく、人工膝関節置換術は誰もがやりますが、手のこととなるとみんな手を出しません。
ですから、患者さんにも説明があまりされないため、「手のことはしょうがないわ」と最初からあきらめてしまっている患者さん(医者も含む)が多くなります。しかし、医者からきちんと説明ができて、理解してもらえれば、いろいろとお得な情報はあるわけです。
歩けなくなることは大問題ですが、手が使えないことは本当はもっと大きな問題です。歩けなくなっても手が使えれば、杖や車いすを操作して移動できます。手が使えないからといっとて、足で代用はできません。
さて、昨日初めてコメントをいただいたhiroさんから、リウマチの手についての質問をいただきました。こちらにも質問をコピペしておきます。
「最近手指が動きづらくなってきてまして、暇さえあれば反対の手を使って、固まってなるものか、えいえいとグーパーを繰り返しています。
…が、これはもしかして腱には危険ですか?
実は、動かしたあと掌の中央が妙に疲れるのでアレ?と思っていたりしています」
ぶっちゃけて言うと、けっこういろいろな可能性がある質問なので、実際に見ないで答えるのは大変にむずかしいのですが、あえて「誤診」をおそれず説明いたします。
指が動きにくいという状態は、関節(および骨)が原因の場合と腱が原因の場合があります。
その前に基本用語の確認。指の関節の名前は指先からDIP関節、PIP関節、そして指の付け根のMP関節という3つがあります。ただし、親指だけはDIP関節とPIP関節の区別はないので、IP関節と呼びます。
①関節が原因の場合
リウマチでは、典型的にはMP関節が腫れて起こる白鳥の首変形というものと、PIP関節が腫れて起こるボタン穴変形があります。最初はちゃんと動きますし、元の形に戻そうとすれば戻りますが、しばらくするとだんだん変形が完成して戻らなくなります。
この間に関節の骨が壊れて、最終的には固まってしまうわけです。ですから、この場合はhiroさんように反対の手を使ってでも、多少痛くても動かすようにしていた方が固めにくく出来るのでいいと思います。固まっていなければ、場合によっては手術で挽回できることがあります。
親指のIP関節やMP関節は横へぐらつくような不安定性がしばしば出ますが、この場合はもともと大きく動かして使う関節ではないので、必ずしも動きが保たれていることがいいとは言えません。最終的には手術でも好んで関節を固定することがあります。動かないけど、安定性が増して痛みがない方が使い勝手が良くなるのです。
②腱が原因の場合
これにはいろいろな場合があります。まず指を伸ばすための伸筋腱の問題。伸筋腱は手の甲にありますが、平べったい腱なので、手首の炎症が強く、骨の変形が強い方はしばしば断裂してしまいます。
いきなり、ある日を境に切れて動かなくなることがありますが、だんだん動かせなくなってついに切れてしまう事もあります。そういうときは、何となく指が伸びにくいという感じがあるものです。この場合は、無理に動かしていると断裂を早めることになりかねません。
ただし、いずれは切れてしまうことは避けられませんので、その時はしょうがないと腹をくくって、関節の拘縮を防ぐために動かし続けることも無駄なことではありません。
手の平側には、指を曲げるための屈筋腱が通っています。伸筋腱に比べると屈筋腱が断裂することは少ないのですが、たいてい手首の付近で断裂するか、あるいは指の付け根付近で切れます。腱の周囲にリウマチ特有の滑膜炎組織がまとわりついて、腱がしだいに弱くなっていくのです。
手首では手根管(しゅこんかん)と呼ばれる狭い場所があり、ここで腱同士が癒着したりして、動きが悪くなってきます。無理に動かすと多少痛みを感じるかもしれません。指の付け根では腱鞘(けんしょう)というトンネルの中にそれぞれの指にいき腱が入っていくので、ここで摩擦が起きやすくなります。やはり、動かしすぎると痛みがでるでしょう。いずれにしても、あまりがんばって動かしていると腱が切れることにつながります。
しかし、伸筋腱の場合と同じで、動かさなければ断裂しないという保証はありません。どうせそのうち切れると居直ってしまえば、動かして損はありません。あとは、そのへんをどう考えるかということですね。伸筋腱断裂は場合によっては、あまり不便がないために放置している方も少なくありません。しかし、屈筋腱は不便がないということは少ないので、積極的な手術を考えるべきだと思います。ただし、屈筋腱はなれていない医者が手術するとたいていうまくいきません。よーく、相談をしてください。