沈黙の艦隊といえば、かわぐちかいじの1988年から1996年にモーニングに連載された劇画。日本初の原子力潜水艦「大和」が独立国家宣言をして、核の抑止力で世界平和を実現するために行動するという話。
もちろんその筋の専門家に言わせれば、荒唐無稽であちらこちらにあり得ない部分があるのでしょうけど、一般人を納得させるだけの十分な考証の基に、そんなこともあり得るかもと思わせる息詰まる展開はなかなかのものです。
ちょっと、間違えば戦争ものと言われるようなジャンルになるのでしょうけど、人間ドラマとして描ききったことで、物語にさらなる真実味が加わったのではないでしょうか。
連載が始まった頃は、自分はほとんど世間から隔絶されたような研修医生活をしていましたから、この物語を知ったのは、連載もほとんど終わりの頃。当時、出向していた病院の放射線科の技師さんが毎週モーニングを愛読していて、おかけで海江田が国連に乗り込む当たりから毎週読んでいたのです。
ですから、これは何とか最初から読みたいものだと思い、ちょうど講談社漫画文庫版が完結していたので全16巻を買いそろえました。現時点で、自分で読みたくてそろえたマンガとしては最後のものになります。
とはいっても、なかなか簡単には手に入らず、ずいぶんと古本屋さんを歩きました。まだbookoffはほとんどなかったんですよね。もちろんインターネットのオークションもありません。
全部が揃って読み切ると、戦争を題材にして潜水艦同士の熾烈な戦いにワクワクするものの、最初から最後まで戦争を否定する気持ちが詰まっていることが分かります。
でもって、なんでこの話になったかというと、現実の世界では国籍不明の潜水艦が高知沖の日本の領海内で発見されたというニュースがあったからです。
他国の領海内では潜水艦は浮上して国旗を掲揚して航行する決まりだそうですが、この潜水艦は潜望鏡だけが海上に出ていて、正体は不明。
海上自衛隊の追跡を振り切って太平洋に消えたそうですが、そんな危機感のみじんも感じられないような今の日本でも、知らないところでいろいろなことが起こっているんでしょうね。
深海の見えないところでは、様々な情報が飛び交っているかもしれないと思うと、ちょっと怖い感じがしました。