言わずと知れた石森章太郎(後に石ノ森に改名)の初期の代表作。昭和30年代のこどもにとっては、東京オリンピックの年に少年キングに連載開始されたわけで、手塚治虫の鉄腕アトム、横山光輝の鉄人28号につづくSFファンタジー。
ロボットのようにスーパーな能力があるけど、基本は人間という設定がよかった。また、能力に差があって、それぞれのキャラクターにできることとできないことがあることも、ストーリーを単調にしないですむ大きな要因だったように思います。
1970年までは継続的に連載され、秋田書店から単行本が出ましたが、最後は尻切れトンボで終了したのは残念でした。その後もちょこちょこ執筆されたようですが、ほとんど目にしたことはありません。1988年に作者が亡くなり、完結することはなくなりました。
いや、なんで009かというと、初期の記憶に残るエピソードにベトナム編というのがあったわけです。あざみ野棒屋先生が、ベトナムに旅行をしてベトコンの地下壕の入り口で記念撮影をしています。
009に親しんだ少年にとっては、当時ベトナムは身近な国だったんです。石森章太郎は009の中で、ベトナム戦争や中東戦争などのハードな状況をかなり盛り込んでいて、こどもには本当のところは理解できませんでしたが、世界にはいろいろ怖いことがあるんだな、と教えてくれました。