整形外科だと、こどもは関係ないと思ったら大間違い。ケガはこどもに多いし、普通の整形外科をやっていても、こどもとは切っても切れないんです。
ですから、ほんちゃんの小児科ほどではないとしても、こどもの扱いというのには気を使うものです。ちょっとしたおもちゃなんかはいつでも用意しておいて、いざというときの武器として出せるようにしていたりします。
痛いところをいきなり触ってはダメなので、離れた場所をちょんちょんとつついたりしながら、だんだん診察したい場所に近づいていくわけです。時には、他人が見たら何してんのといわれそうな、あやしかたをしたりもするものです。
大学病院に勤務していた頃に、一時期腫瘍専門みたいになっていたことがあります。整形外科の腫瘍というと、代表的な病気は骨肉種という悪性腫瘍なんです。
これは圧倒的に10歳くらいから15歳くらいのこどもに発生し、死亡率はけして低いものではありません。20年前くらいの当時は、まず抗がん剤による化学療法を行って、少しでも腫瘍を小さくして、すでに起こっているだろう転移を押さえ込む。
それから、手術ですが、薬の効果がないと手足の切断をしないといけないわけで、こどもたちにとっては、とても楽な病気とはいえません。
こどもたちとのコンタクトをできるだけ頻繁に行って、つらい治療をなんとかわからせて続けないといけません。ですから、患者さんを一人でも持つと小児病棟に入り浸りみたいになるものです。
整形外科に限らず、いろいろな科の小児悪性腫瘍の患者さんがたくさん入院していて、そういう病棟は、本当ならとても明るい雰囲気を持てるものではありません。小さいこどもたちは、幼くして命を消さないように戦っているわけです。
それでも、少なくとも自分の知っているこどもたちはみんな明るかったです。病気のことは、すべてではないとしても、あらかたわかっているにもかかわらず、しっかりと前を向いてがんばっていました。
病棟には、学校のミニ学級があったり、いろいろな季節のイベントにからんで病棟のスタッフがいろいろな企画をして、病院からでれなくても精一杯楽しめるように工夫をしていました。
なんで、こんな話を書いているかというと、今日のテレビでそんなこどもたちの力になる犬の話をやっていたからなんです。アニマル・セラピーというんだそうですが、確かにかわいらしい犬が病棟にいて、こどもたちが笑顔を絶やさないようにできることは大きな意味があるんでしょう。
あの頃、そんなことができていれば、自分の仕事も少しはよりやりやすくなっていたのかもしれません。動物と一緒にいることには、無視できない力があるんですよね。