クラシック音楽のアルバムの企画として、昔から全集録音というのはコレクター心をくすぐる定番
物で、特にCDになって収録時間が増えてからはあまたの名作が登場しているわけです。
作曲家ごとにすべて集めるというのもあって、モーツァルトなどはCD200枚を越える。演奏家ごとにすべてを詰め込むというのも、例えばカラヤンとかルビーシュタインとか、もう膨大すぎて、置き場所そのものに困りそう。
一番気楽に手を出せるのが、誰々のピアノソナタ全集とか、協奏曲全集とか、ジャンル的にまとまったもの。これなら、たいていは多くてもCDで10枚くらいで、その気になれば日曜日一日で聴きとおせます。
ベートーヴェンの交響曲全集は、全9曲で普通はCD5枚。モーツァルトになると番号がついているものが第41番まであって、番号無しを含めてだいたい50曲前後というのが定番の量。CDだと10枚から12枚くらいが普通の構成です。
クリストファー・ホグウッドという人は、クラシック界の音楽学者として知れ渡り、古楽奏法の牽引者として有名な一人。ホグウッドは、モーツァルトをあれこれ発掘して今では交響曲として扱われていないが、作曲当時は交響曲として意図されたものなどを含めて、80年代前半に何とCD19枚、全71曲の全集を作りました。
これが、なんとクラシックとしては異例の大ヒット。そこで、次はハイドンの全集を作ろうという企画が持ち上がった。ところが、ハイドンの交響曲はというと100曲を越える膨大な量があります。さすがに、レコード会社もいきなり始めるのは怖かったのか、比較的知られている「ロンドン」、「軍隊」、「奇跡」、「驚愕」という後期の有名どころを出しました。
モーツァルト全集の好調な売れ行きに気をよくしたレコード会社は、いよいよハイドン全集化にGOサインをだして、いよいよ壮大な企画が始まったわけです。ところが、実際はクラシック録音史上、最も残念な「途中で頓挫した企画」として語り草になってしまいました。
なにしろ、全15巻予定でひとつのセットが三枚組み7500円のフルプライス、ほとんど人気の無い初期のものから始めたので売れるわけが無い。それでも、会社もずいぶんと我慢して10巻まで出したところで、終了してしまいました。81曲を録音し、あと少しというところ、それも人気のあるザロモン・セットやパリ・セットが抜けてしまったのは痛い。
それでもCD32枚というのは、なかなかの量。人気はあまり無いとは言え、初期の交響曲の古楽アプローチはあまり録音が無いだけに、それなりに今でも存在意義があるわけです。昨年にすべてをまとめたボックスが登場して、当初の1/10の値段で手に入るようになった事は喜ばしい。
発売されて1年くらいたちましたが、そろそろ入手が難しくなってきたようです。Amazonでは取り扱いが無い状態が続いています。HMVも、一時入手困難となっていました。興味が有る方は、早めに行動したほうがいいようです。