2013年9月1日日曜日

関節リウマチの早期診断と勉強

関節リウマチを心配して病院を訪れる方は、うちのような小さなクリニックでも月に10人程度はいらっしゃいます。そのほとんどは、リウマチではなく使い過ぎ的な物理的ストレス過多か加齢性の問題だったりするわけで、本当にリウマチであると診断できる方は数か月に一人くらい。

これは、女子医科大学のリウマチセンターで診療をしていても言えることで、リウマチが怪しいとして紹介されてくる方が中心にもかかわらず、実際リウマチと考えられるのは10人に一人程度でした。

関節リウマチという病気は、有病率は0.5%。けっして多い病気ではありません。しかし、心配する人は少なくないのは、一つには数年前まで使われていた診断のための分類基準の中に「朝のこわばり」という言葉があって、これが一般に広く浸透したことが関係していると思います。

何かしら、手指の痛みを伴うような問題があると、たいていはこわばりを感じるもので、特に朝は筋肉の動きが悪いため、よけいに感じるものなのです。必ずしもリウマチに特異的なものではないのですが、「こわばり」=「リウマチ」というイメージが作られてしまったのは医者に責任がある。

また、リウマチ因子と呼ばれている血液検査項目があるのですが、この名称のために陽性だとリウマチと診断してしまう医者がいまだに少なくないことも問題です。

リウマチ患者さんでは、リウマチ因子が陽性になるのは60~70%と言われていて、陽性でもリウマチではない方はけっこうの割合で含まれています。逆に、因子がゼロでもリウマチの方はたくさんいるものです。

もちろん、診断の上で重要な検査項目なのですが、現代のように超早期の診断が求められるようになってくると、ますます色々な検査の結果から多角的に判断していく必要があり、リウマチ因子だけに注目していては簡単に見誤ってしまいます。

関節部分に限局した腫れと、安静にしていてもうずくような痛みがあれば、症状からはリウマチを疑いやすいのですが、これも発症早期でははっきりしないことも少なくありません。早期から治療を開始すれば治ったような状態になることも知られてきたので、最近は症状が出始めてから来院するまでの期間が大変短い。

ですから、現在使われている分類基準では症状と血液検査の結果から判定をしますが、それだけでは診断は困難なことが多く、超音波検査やMRI検査でのチェックなども状況によって併用していくことが大事になってきます。

したがって、かぜのように、医者ならだれでも診療ができないと困るような病気とは一線を画す問題であり、診断した後の治療も含めてますます専門性が高くなっているわけです。自分たちのようなリウマチの専門医を名乗っている医者にとっても、日々の知識のアップデートは休む暇がありません。

実は、こういう話を書いているのも、先日医師会でリウマチ関連の講演会があったからなんです。いろいろな科のいろいろな専門を持っている医者の集まりである医師会では、この手の勉強会では、最小限の知識を整理して、適切に専門医に紹介したりすることが目的。

出席してみると、内容的には目新しいことはなかったのですが(講演していただいた聖マリの山田先生ごめんなさい!!)、もう一度知識の再確認ができました。こういう会に参加するのは、実質的な専門医と自覚している医者か、逆に専門医ではないと自覚している医者です。リウマチ関連以外のプライマリー医学の領域についても、自分ももう少し勉強をしないといけないなと改めて思いました。