この映画は、ロッキー色からシルベスター・スタローンが抜け出て、アクション・スターとしての地位を確立した作品。基本的には娯楽映画という範疇に入るものですが、タイトルは"First Blood"であって、ランボーはあくまでも主人公の名前。
First Blood は「先手」という意味で、この映画ではベトナム帰還兵のランボーが、風来坊というだけで保安官から攻撃されることから、先に手を出したのは保安官というところからついたタイトル。あえて、邦題をつけると「ちょっかい」という感じでしょうか。
60年代末にアメリカはベトナムに派兵して、世界の警察としての大義名分を発揮し始めます。これは今でも、シリア問題などで「世界の平和」のためというような威信をちらつかせるわけですが、他国に対する軍司活動はあくまも自国の利益を死守することが最優先であることは疑いようもありません。
ベトナム戦争は、実質的にアメリカの敗北となり、精神的・肉体的にもアメリカに重い後遺症を残すことになるわけですが、映画の世界でも70年代なかばからベトナム戦争を描くものが作られるようになりました。
その代表は、アカデミー賞に輝く"Deer Hunter(1978)"であり、ベトナム戦争によって病んだアメリカを痛烈に描き出しました。そして"プラトーン(1986)"で、ベトナムを否定的に見る反戦映画は完成したのだと思います。
一方で、"ランボー"は、帰還兵の悲劇をベースにしているものの、ベトナム戦争そのものを描くわけではなく、一人の軍隊と呼ばれるランボーと警察との戦いをテンポよく見せるアクション映画。ベトナム戦争をエンターテイメントにした最初の映画かもしれません。
それでも、戦争の悲劇というものが、戦争そのものが終わった後も続いているということを端的にアピールすることには成功しているのかもしれません。
この後に続くシリーズは、主人公の「一人の軍隊」という設定だけを受け継いだ完全に派手なアクションのみの映画で、あまり内容を考える必要はなくなります。
第一作は、そういう意味ではやや地味な感じですが、あえてシリーズの中から一つだけ見るならこれだけで十分というところでしょぅか。
☆☆☆★★