東野圭吾原作を、大友啓史監督、二宮和也、豊川悦司主演で描くサスペンス映画。
舞台は数年後の日本という設定で、DNA鑑定のプロファイリングにより、データが登録されている中から、ほぼ一人の人間を絞り込めるということが話の骨核。
そのためには、すべての国民のDNAデータを収集する必要があり、この究極の個人情報を法律によって様々な手段で集めていく。しかし、そこには当然登録されてはいろいろと困る人たちがいて・・・というのが、事件を大きくしていくわけです。
他にも、すべての監視カメラからの情報をコントロールして、顔、体型、音声などから写っている一人を特定する技術なども紹介されています。これは今でも、ほぼそれに近いことが可能であることを紹介したテレビ番組もありましたね。
例えば「国民総背番号制度」といわれるようなシステムの構築が議論されますが、さらに発展していけば、この映画の中で描かれるような「国民完全登録制度」というのもあながち絵空事とも言えないところです。
今のところ、病気になったりするとそれぞれの病院などに、個人の病歴は個別に保管されていきます。それらを結ぶ直接的な方法はありませんから、必要なときは「紹介状(診療情報提供書)」を持っていくことになります。
個人の病歴を、個人が管理することができれば、そういう手間もなく、また正確な情報がすぐに取り出せるので大変便利な事になり、現在の技術でも小さなICカードにすべて詰め込むくらいは簡単に可能なこと。
もしも、映画のようにそれらの個人情報をある組織がすべて管理してデータベース化すれば、学問的にも臨床研究の大部分が飛躍的な成果をあげられることは間違いありません。
その一方で、組織の中でそれらを悪用しようとするものが出てくれば、いくらでも恐ろしいことが発生するだろうことも想像に難くありません。少なくとも、まだまだ管理体制はほぼないような状況で、仮に現実化するとしても相当先のことでしょう。
映画の話に戻ると、テーマとしては面白いのですが、映画としては短い時間に詰め込みすぎたきらいがないわけはない。監督は元NHKでテレビの出身。これはNHKで、5回程度の連続ドラマで作るくらいのボリュームがあったほうがよかったかもしれません。
全体的には消化不良な感じで、二宮クンの嵐人気に乗った感も否定できません。二宮の二重人格という設定も唐突で、豊川の行動もやや理解に苦しむところ。拾い物は、真面目な演技をさせると生瀬勝久はすごいということを再確認(ガリレオ2もよかった)したことでしょぅか。
☆☆☆★★