高齢発症関節リウマチと呼ばれる病気があります。基本的には関節リウマチと同じなのですが、65歳以上で初発するものを、そう特に呼んでいます。
通常、関節リウマチは30歳代~50歳代くらいで発症することが多く、女性は男性の3倍程度の発症頻度です。主として手や足の指のような小さい関節から始まることが多く、病気の進行がゆっくりの方もいれば、とても速い方もいたり、人によってけっこうばらばら。
日本が高齢社会になった影響もいくばくかはあるのでしょうが、21世紀になって高齢発症する患者さんが増えてきていることは明らかで、自分のクリニックでも「まさかこの年でリウマチはでないだろう」と思うような高齢の方が、リウマチとしか考えようがないケースというのも珍しくなくなりました。
高齢発症の場合は、男女比はあまり差がなく、膝・肩などの大きな関節から始まることが多い。このため、ただの老化による関節の痛みとして扱われていることも少なくないようです。通常の老化の関節の症状よりも腫れが強かったり、痛みもなかなか落ち着かないような場合には一度は考えておかないといけないわけです。
また、血液検査では炎症の状態が強めに出ることが多く、症状も強めであったりします。しかし、診断上意義の高いリウマチ因子や抗CCP抗体といった項目が、出ないことも珍しくないため、より診断に難渋することがあります。
また、本来関節の症状だけなのですが、高齢発症では筋肉の痛みを訴えることもあり、別の病気との鑑別も重要になってきます。
しかし、一番の問題は治療法でしょう。通常使われる抗リウマチ薬は、副作用がいろいろ出る可能性があって、慎重に使用しなければいけません。でも、若い方の場合は副作用があっても、早めに対策を取ればほとんどは特に問題にはなりません。
高齢者は、薬の血液中の濃度が高くなりやすく、また排泄が遅くなりやすい傾向があり、副作用が出やすいかもしれません。また副作用が出たときに、予備力が少なくなっているので、重症になることもありうるのです。
そのため、なかなかしっかりとした薬を本来必要な量だけ使用することが難しく、場合によっては痛みどめだけで何とか様子をみるしかないというケースも存在するのです。しかし、発症してから初めの数年以内が最も骨の変形が出やすいので、初期の治療を十分にできないと、結局は寝たきりのような状態になってしまうかもしれません。
今後も高齢発症関節リウマチの患者さんは、どんどん増えてくるだろうと容易に想像できます。高齢者は、遠くの大きな病院にまで通院することは大変ですから、自分たちのようなクリニックはこのような患者さんのことも十分に承知して治療に当たらないといけないと思っています。