指が痛い・・・というのは、それほど珍しい症状ではありません。
外来でも、しばしば遭遇するわけですが、大半の患者さんは関節リウマチという病気を心配されている。しかし、実際のところ、リウマチは少ない病気とは言えませんが、だからといってやたらとあるわけではありません。
リウマチは30~50歳くらいで発症することが多く、男性に比べ女性のほうが数倍多いことが知られています。
それよりも若い場合には、外傷性の問題か、使いすぎによる痛み、典型的には腱鞘炎での症状であることが圧倒的に多い。それよりも高齢の場合は、ほとんどが加齢性の関節の変化が原因です。
通常、腱鞘炎は指の付け根付近、手のひら側に痛みの中心があります。加齢性の変化は、一番はじの関節、時には真ん中の関節に痛みがあり、いずれも動かさなければ痛みが無いのが普通。
やっかいなのは、リウマチも含めて、指の痛みがあると、だいたいとの場合でもこわばりを感じることです。こわばりは、なんとなく動かしにくいというものから、はっきりと動かせないというものまで様々。たいてい、起床時の朝に強く感じるというのも共通の話です。
以前使われていたリウマチの診断基準の中に、「朝のこわばり」という項目があったため、これがよく知られるようになって、指の痛みがあって朝動かしにくいとリウマチを心配するのが、なかば「常識」になってしまいました。
また、高齢化に伴い、リウマチを発症する年齢も上がってきていて、最近は70代、80代でもリウマチとしか言いようがない症状を初めて出す方も珍しくなくなりました。
痛みが出てから病院に行くまでの期間もずいぶんと短縮されてきたので、ぱっと見てすぐに判断ができるようなケースはほとんどない。リウマチを専門で診療している医者でも、加齢性の変化による痛みは、しばしば診断に悩むものです。
少なくとも、一番はじの関節から始まるリウマチは、ほぼ「無い」と言っていいと思います。真ん中の関節は、どっちとも言えない。付け根の関節、手の甲側の痛みはリウマチの可能性があります。
また、一番心配するのは腫れているかどうかということ。ごつごつして、骨の隆起を想像する腫れ方は、ほぼ加齢性のもの。腱鞘炎では、指全体が浮腫むような腫れ方をする場合があります。リウマチでは、関節の部分に限局して、皮膚と関節部分の間にマットが入っているような腫れ方をします。
しかし、痛みが出てから数日から数週間程度では、診察だけで確信を持つ事はなかなか難しく、後は血液検査と画像検査、レントゲン、MRI、超音波などの客観的なデータと合わせて判断するしかありません。