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2019年3月3日日曜日

映画 ひみつのアッコちゃん (2012)

言わずと知れた、赤塚不二夫原作の昭和の漫画で、自分たちの世代には「魔法使いサリー」と共に、男の子でも毎週よくテレビで見たアニメ。魔法のコンパクトを使って、少女がいろいろな人等に変身して、騒動を起こしたり解決したりするのは、夢一杯で楽しませてもらいました。

それを実写化する・・・と言っても、こども向けではなく、こどもも含む全世代を対象とした映画、しかも昭和でなく平成の現代に蘇らせるのは簡単なことではありません。荒唐無稽なファンタジーですし、大人の姿をしていても実際はこどもが主役だということを忘れてしまったら、こんなバカげたあり得ない話ということになってしまう。

ある意味、こどもの頃の素直な気持ちを持ち続けている人・・・忘れてしまったこどもの頃の記憶をたどることができる大人かどうか、見る人を測る物差しみたいな映画ではないでしょうか。

小学五年生の加賀美あつ子(吉田里琴)は、大事なコンパクトを落として鏡を割ってしまったため、鏡の墓を作ってあげました。すると鏡の精(香川照之)が現れて、魔法のコンパクトを渡されます。

「テクマクマヤコン、テクマクマヤコン」と言えば、なりたいものになれる。そして「ラミパス、ラミパス、ルルルルル」と言えば元に戻る。ただし、その秘密がばれてしまうと、二度と変身はできなくなると説明されます。

大人に変身したアッコちゃんは、デパートの化粧品売り場で、赤塚化粧品の企画室で働く早瀬尚人(岡田将生)と出会います。尚人は、大人ではなかなか言えない、的を射た化粧品に対する感想を口にするアッコちゃんに興味を持ち自分の下でバイトをさせることにしました。

当然、中身は小学生なので、大人の社会のことはほとんどわからず、失敗ばかりをするアッコちゃんでしたが、あまりに素直な発想が思いがけない仕事のヒントを尚人に与えるのでした。アッコちゃんの提出した履歴書には「早稲田大学算数学部」と書いてありましたが、尚人はいつか理由を話してくれると思い気に留めませんでした。

赤塚化粧品は、自分たちの営業努力よりも、会社を怪しげな企業の鬼頭(鹿賀丈史)に明け渡そうとする保身だけを考える熱海専務(谷原章介)一派に牛耳られていました。尚人は、何とか良い化粧品を作ることで会社の伝統を守りたいと考えていたのです。

熱海専務は、株主総会で鬼頭らの事実上の乗っ取りを承認させようとして画策してきたのですが、ついに我慢できなくなったアッコちゃんは総会の壇上に上がり、「みんな小学校で教わったでしょ!! 楽してずるしちゃいけない。ちゃんと話し合いをしなくちゃだめ」と意見するのです。アッコちゃんや尚人の説得により、ぎりぎりで熱海一派の再任を防ぐことに成功しました。

鬼頭は実は某国の手先で、尚人らの研究を軍事利用しようと考えていたのですが、乗っ取りに失敗したため工場もろとも研究成果を灰に葬ろうとします。そのことを知ったアッコちゃんは工場に急行し、飼い猫のシッポナに変身して機械の奥の隅に仕掛けられた爆弾を発見します。

そこへ尚人もやってきたので、爆弾の事を知らせたいのですが、今の姿は猫。アッコちゃんは、魔法がもう使えなくなることを覚悟して「なりたいものになれ」と願うのでした。変身したのは、大人の姿。驚く尚人に爆弾を渡し、間一髪工場の破壊を阻止することができました。

その夜、大人の姿のまま元に戻れず泣いているアッコちゃんのもとに、再び鏡の精が現れ「なりたいものになれた?」と尋ねます。アッコちゃんは「本当の大人にはなれなかった」と答えます。鏡の精は「大人って何? 一生懸命働く人? 心の傷みを知る人? 自分の身を投げ出して誰かを守る人のこと? 魔法を使わなくてもアッコちゃんはもうなっているよ」と語りかけるのです。

そして最後にあと一度だけ、コンパクトで魔法を使えるようにしてくれました。アッコちゃんは、そっとコンパクトを手に取ると、「テクマクマヤコン、テクマクマヤコン、私になれ!!」と願うのでした。

10年後、アッコちゃんは赤塚化粧品の就職試験を受け、尚人の面接に臨むのでした。自己紹介で、「早稲田大学算数学部、加賀美あつ子です」といい、アッコちゃんと尚人は微笑み合うのでした。

監督は「のだめカンタービレ」、「海月姫」などを手掛けた川村泰祐で、本来こども向けの漫画を、大人のためのファンタジーに作り替えました。特にこの映画で示したかったのは、最後の鏡の精の言葉だろうと思います。

ですから、唐突な感じがする工場爆破がいらないという批判的な意見もあったりしますが、株主総会の成功で終わっていたら、ただのドタバタ・コメディになっていました。アッコちゃんが、魔法が使えなくなることを承知で危機を乗り切る場面があったからこそ、大人になるということがどういうことなのか伝わるものが生まれてくるのです。

アッコちゃんの最後のお願いは、「ラミパス・・・」だとばかり思って見ていました。しかし、後戻りの「ラミパス・・・」ではなく、「自分になれ」という、前向きの姿勢を願ったことはよかったと思います。

「ホタルノヒカリ」で人気が爆発した綾瀬はるかには、それをさらに推し進めて自らコメディを演じることに成功していると思います。大人の姿をした小学生をいきいきと演じ、平成の時代のアッコちゃん像として強いインパクトを残しました。

あのマンガを今更実写化してどうなのと思って見始めたのですが、いい意味で期待を裏切られたなかなかよくできた作品に巡り合ったと思います。また、最後に、懐かしいアニメのテーマソングが流れるところもナイスでした。