松岡圭祐原作の「死んだ人が登場しない」推理小説として人気のシリーズの実写映画化。「図書館戦争」、「GANTZ」などを手掛けた佐藤信介が監督。主演の綾瀬はるかにとっては、得意なジャンルであるライトミステリーなんですが・・・
万能鑑定士Qと名乗る凜田莉子(綾瀬はるか)は、持ち込まれる様々なものを豊富な知識を駆使して鑑定する仕事をしています。たまたま鑑定依頼から、宝石強奪事件を未然に防いだことからルーヴル美術館の臨時学芸員の試験を受けることを勧められます。凜田に興味を持った、あまり優秀とは言えない雑誌記者の小笠原(松坂桃李)は、密着取材を始め、凜田を追いかけてパリについていきました。
ルーヴル美術館所蔵の世界的な名画、レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナリザ」を40年ぶりに日本で公開することになったのです。そこで、確かな鑑定力を持ったスタッフを選抜するのが目的で、凜田は美術館で行われた試験に合格します。
一緒に合格になった、真の芸術の価値を愛する流泉寺美沙(初音映莉子)は、翌日ルーブルのスタッフと共に凜田の前に現れ、このあと軽井沢の合宿で学芸員としての訓練を受けることを告げます。
軽井沢での合宿では、たくさん並んだ贋作の中から本物を探す訓練が行われます。これが、精神的な重圧となり、凜田の鑑定力にも影響を及ぼし始めるのでした。ついに鑑定士としての自信を喪失した凜田は、故郷の沖縄に帰ってしまうのですが、訓練の方法のトリックに気がついた小笠原が駆け付け、凜田は再び自信を取り戻します。
実は、流泉寺美沙らは、「モナリザ」を盗み出そうとする一味。自分たちで設定した軽井沢合宿に招いて、本物を確かに鑑定できる邪魔者の凜田を精神的に追い詰め手を引かせようとしていたのでした。
凜田と小笠原は、来日した「モナリザ」の元に急行しますが、偽物とすり替えられた直後でした。凜田は、断片的な情報からその隠し場所を推理し、ついに港から持ち出される直前で本物を鑑定することに成功したのでした。
凜田の抜群の鑑定力、というか推理力の根拠となるのは膨大な知識量なんですが、映画の中では本などを見たままに映像化して記憶する力に長けていると説明されています。実際、そういう力を持った成績優秀の同級生がいたので、自分的には納得できる。
しかし、凜田がまったくわからなかったフランス語を翌日にはぺらぺら話せるというのはさすがにいかがなものか。「読める」まではありだと思いますが、「話す」はやりすぎ。タイトルに見なった「モナリザの瞳」の謎についても、凜田を潰す手段としてはあまり説得力を感じませんでした。
他にも突っ込みどころ満載の脚本で、全体的に強引にストーリーを進めている印象です。映画ですから、中心となる素材以外は簡略化することは許されると思いますが、中心さえ作りが荒いのでは見ていて辛い。
ルーヴルでのロケは映像的には素晴らしく、「ダ・ヴィンチ・コード」にも劣らないスペクタクル感がありますが、難しかったのかもしれませんけど、パリでの展開が少なすぎてもったいない。せっかくのパリで、もっと綾瀬はるかを動かしてもよかった。
綾瀬はるかは、実直過ぎるキャラのため、時々コミカルな状況を作るというのが持ち味の一つですが、この凜田莉子も本来ははまり役になりそうな感じのもの。もう少し、周囲のキャラを作り込んでくれればよかったのですが、突込みばかりでボケがいない漫才みたいになってしまったのが残念です。