それもそのはず。この監督と主演のコンビは、名作の誉れ高い「明日に向かって撃て(1969)」、「スティング(1973)」についで3作目。撮影のロバート・サーティースも名カメラマンでヒル組ともいえる存在です。
舞台は1920年代のアメリカ、ネブラスカ。第一次世界大戦でパイロットだったウォルド・ペッパー(ロバート・レッドフォード)は、大空にかける思いを捨てきれず遊覧飛行を商売にしている身でした。
ウォルドにとって最高のパイロットはドイツの撃墜王、エルンスト・ケスラー(ボー・ブルンデン)で、彼は戦争中に一度遭遇した時、先頭不能になった自分に発砲せず敬礼をして去っていった話をことあるごとに話していました。ある日、ウォルドの縄張りに同業のアクセル・オルソン(ボー・スヴェンソン)がやってきて、ペッパーに嫌がらせをしたため、ウォルドはオルソンの飛行機の車輪を外して仕返しをするのでした。
映画館で知り合ったメアリー・ベス(スーザン・サランドン)と食事をしてケスラーと戦ったことを話していると、そこに松葉杖をついたオルソンがやってきます。オルソンは、その戦いをにはウォルドがいなかったことを知っていました。
結局、ウォルドはオルソンと協力して曲芸飛行をすることになり、興行師ディルホーファーに雇われ、次第に過激なスタントを求められたことで、メアリーを翼に乗せることにしました。しかし、恐怖で動けなくなったメアリーは墜落死してしまう。
オルソンはパイロットを辞め、映画業界に入り成功します。パイロットを諦められないウォルドは、飛行免許を剝奪されてしまい、オルソンの世話でスタントマンになるのです。ちょうどハリウッドではケスラーを題材にした映画が製作されていて、オルソンとウォルドは顧問として参加していたケスラー本人と会うことができました。
お互いに飛行機乗りとして捨てることができない夢とプライドを理解しあった二人は、一騎打ちのシーンの撮影に臨み、脚本を無視して本当にドッグファイトを始めるのでした。本物の銃は装備されていないので、接近しての体当たりを繰り返し、ついにケスラーは操縦不能になってしまいます。ウォルドは近づいて並んだところで、お互いに敬礼をして両者とも雲の中に消えていくのでした。
70年代のアメリカ映画らしい、まだ多くの夢を見ていた男たちのドラマ。レッドフォードも脂がのっていた時期ですから、実にさわやかな後味の余韻を残す秀作。主人公のウォルドは、この後「紅の豚」のポルコ・ロッソになった・・・わけはないんですけど、キャラクターとしては通じるところがあるように思います。
空中戦なども、今のCGてんこ盛りの物と違い実機を使っての撮影ですから、迫力がある。ただ、かつての名作に比べると、やや共演者が弱い。スーザン・サランドンも途中でスクリーンから消えてしまい、最後まで絡ませると面白かったかもしれません。ウォルドの妹役で、「スーパーマン」で名が知られるようになったマーゴット・キダーがちょっと顔を出しています。