五輪真弓というと、21世紀になって目立った活動が伝わってこないのですが、現在73歳、1972年のデヴューから半世紀を超え現役のシンガーです。
自分にとって音楽をよく聞くようになった最初期の歌手の一人で、あらためてずっと聞き続けたい曲がたくさんあります。
ただ、五輪真弓の名前が誰にでも浸透するようになったのは、レコード大賞受賞曲である1980年の「恋人よ」からです。何故大ヒットしたのかというと、いわゆる「歌謡曲」に振り切ったからでしょう。ただ、残念ながら、この曲は自分が五輪真弓を聞かなくなる分岐点となりました。
もともとデヴュー当時は「和製キャロル・キング」と呼ばれ、フォークでもないポップス系に近いピアノを中心とした弾き語りのイメージだったので、主として洋楽が好きだった高校生の自分にフィットしたのです。ですから、自分の五輪真弓は「恋人よ」で終了したのです。
リマスターした再発売のCDもありますが、「恋人よ」までのアルバム9枚を全部聞くのはちょっとしんどい。ベストアルバムはたくさん登場しているのですが、活動歴としては「恋人よ」以後の方が以前より数倍長いので、どれをチョイスしても知らない曲が山ほど収録されていて手に入れたくなる魅力がありません。
いろいろAmazonを検索して、これならばと見つけたのが1985年発売のこのCD4枚組。全60曲というボリュームで、大多数がかつて所有していた9枚のレコードからのセレクトになっています。
デヴュー曲の「少女」から、基本的に時代順に収録されていますので、五輪真弓の変遷がわかりやすい。1枚目は、初期のぼくとつとした弾き語り中心。2枚目になると、フランスで人気となり次第にそれ風の編曲が増えてくる。3枚目は、いよいよシャンソン風に「歌謡曲化」して、4枚目はほぼ馴染みのない曲が並びます。
「恋人よ」以降にファンになった人には、こんな「精錬されていない」五輪真弓はいらないと思われそうですが、原点を楽しむには最適のベスト盤だと思います。