原作は、1989年に発表された柊あおいによる漫画作品。1995年に脚本・宮崎駿、監督・近藤喜文でジブリ作品としてアニメ化されたのが有名です。アニメが広く知れ渡っているので、ジブリ物の実写映画化については、一般からは辛口コメントが多く、なかなか評価されにくいところが気の毒です。
読書好きの月島雫(清野菜名)は天沢聖司(松坂桃李)と知り合い、互いに惹かれあっていきます。雫は小説を書くことに挑戦し、聖司は雫の処女作の最初の読者となるのです。高校卒業とともに、聖司はチェロ奏者として勉強するためイタリアに行くことになりました。
10年後、雫は作家になることを夢見て、出版社の編集部に就職しつつ作品の応募を重ねますがなかなか認めてもらえません。しだいに見えていた光が見えなくなり、聞こえていた音が聞こえなくなるような思いに、ついに直接聖司に会うためイタリアに行くことにするのです。
久しぶりに再開した二人は、楽しいひと時を過ごすのですが、、楽団の女ともだちがやってきて「聖司とあなたは世界が違う。聖司に必要なのは私なのよ」と言われ、失意の中、帰国するのでした。
あらたな思いで立ち直ろうとする雫でしたが、ある夜、窓の外を眺めると・・・
原作やアニメにはないオリジナルの10年後を描くことが中心となっていて、アニメとかぶらない設定に苦心した様子がうかがい知れます。これらは監督・脚本を担当した平川雄一朗のアイデアだろうと想像しますが、映画的には悪くはないと思いました。
コロナ禍の最中の撮影ですから、イタリア風の場所は和歌山県。主なロケ地は神戸が使われています。アニメでは名曲「Country Road」が象徴的に使用されましたが、実写版では赤い鳥の「翼をください」がテーマ曲になっています。
自分はアニメとのギャップは気になりませんでした。とはいえ、そもそも聖司は10年間彼女をほったらかしにして、いくら超遠距離恋愛とはいえ非現実的な設定。実写版だけに、リアリティに欠けた無理がある。じっと我慢し続ける彼女の方もどうよ、という感じでした。