書道にかける女子高校生たちの実話をもとにした、感動青春映画。といえば、よほどのことが無い限り、失敗することにない鉄板ネタです。監督は猪股隆一、脚本は永田優子。
2008年に地元を盛り上げようと愛媛県立三島高等学校が始めた「書のデモンストレーション」が始まりで、それをテレビ局が取り上げ、紙の街、四国中央市のイベントとして「書道パフォーマンス甲子園」を企画し、現在に至るも開催されています。
愛媛県立四国中央高等学校の書道部の部長は早川里子(成海璃子)で、書のライバルであった岡崎美央(山下リオ)が部活に出なくなり、書を書くことが苦痛に思え周りにもきつい態度をとることが多くなっていました。
副部長の篠森香奈(桜庭ななみ)は、何とか部を盛り上げて楽しくしたくてしょうがない。好永清美(高畑充希)は他人の気持ちを考えるのが苦手で一人で突っ走るタイプ。下級生の山本小春(小島藤子)は中学の時のいじめが原因で無口で心を閉ざしている。
ちょうどそこへ、赴任してきた理科教師の池澤(金子ノブアキ)が書道部の顧問になります。池澤は何らかの理由で書家になることを断念して人物で、里子の書をみて「つまらない」と口走るのです。
町は不景気で、商店街も店が次々に閉店しており、清美の父の経営する文具店もついて閉店することになり、皆で書道パフォーマンスをして閉店セールを盛り上げようということになりました。しかし。せっかく集まった人々に墨を飛ばして失敗してしまいます。
それでも里子は初めて目的をもって書を書く楽しさを感じ、部員全員で一致団結して書き上げる作業に手ごたえを感じるのです。町の活性化にも役立つと考え、商店街や市役所に陳情して「書道パフォーマンス」のイベントを行うことにこぎつけたのでした。
しかし、どんなに練習をしても池澤は「まだ何かが足りない」と言うだけで、何が足りないのかは教えてくれません。里子は、パフォーマンスを完成するためには、学校さえも去ろうとしていた美央が必要であることに気がつくのでした。
もはや、当然そうなるという展開なんですが、どんなにわかっていても見入ってしまうのは青春のひたむきさがあるからです。これは演出の力というよりは、やはり出演者たちの頑張りのおかげといえます。
映画としては、当然と言えば当然ですけど、書道ガールズだけに注目した展開。書道部には書道ボーイズもいるんですが、最後までほとんどオマケ以下の扱い。書道師範の里子の父、和紙製造業者のおじいさん、ある意味池澤先生すら、重要な役回りの人物についての描きこみがほとんどありません。
この辺りは映画全体の深みという点からは、物足りなさを感じるポイントで、監督・脚本の力量について残念なところ。実話を重視し過ぎて、フィクション部分の膨らまし方を手加減してしまったというところかもしれませんが、映画としてはかなりパワーダウンしたことは間違いないように思いました。