中学は進学校に入学しながら落ちこぼれてしまい、全寮制の大蝦夷農業高等学校に入学した八軒勇吾(中島健人)は、ほとんどが酪農家の出身の同級生の中で、サラリーマン家庭に育ち自信も目標も無いことに引け目を感じているのでした。
明るい性格で何かと八軒を誘ってくれる御影アキ(広瀬アリス)、目的意識の無さを批判的に見る駒場一郎(市川知宏)、ひょうきんでムードメーカーの常盤恵次(矢本悠馬)、生真面目で丸い体形の稲田多摩子(安田カナ)、おとなしい吉野まゆみ(岸井ゆきの)らとの生活は、実習中心で朝早くからやることが多く、八軒にとっては初めての事ばかりでした。
子豚の世話を始めますが、秋には食用として出荷されると聞いてショックを受ける。駒場に酪農をなめていると言われ、夏休みにアキの家でバイトをすると、大量の牛乳を流してしまいます。
駒場に酪農をなめていると言われ、親の後を継げばいいだけの奴に競争社会で押し潰れるつらさがわかるものかと反発します。しかし、駒場の家の牧場は借金のため手放さるをえなくなり、駒場も学校を退学することになってしまうのです。
夢が無かった八軒は、夢が無いことはこれから何でも自由にやれることに気がつき、親のために自らの夢をあきらめようとしていたアキや駒場のために、皆が自分のために頑張れることを始めようと思いつくのでした。
八軒らを温かい目で見守る中島先生には中村獅童、豚舎を管理する富士先生には吹石一恵、夢がないと言った八軒が楽しみだと言う校長は上島竜兵、アキの幼馴染で馬術のライバルに黒木華、勝手に高校を決めた八軒に「もう期待しない」と言いつつも陰で応援している父親に吹越満、アキの父親に竹内力、祖父に石橋蓮司、叔父に哀川翔らが登場しています。
タイトルの「銀の匙 (Silver Spoon)」は、学食の入口に飾られ校長が大事にしているもの。映画の中では「外国の言い伝えで、銀の匙を持って生まれたこどもは生涯食うに困らない」と説明されています。
中心となるキャストは全員、まだまだブレーク前。妹が有名になる前の広瀬アリスは、確かにまだまだという感じがありますが、矢本悠馬はすでにコメディ・リリーフとしていい味を出しています。上島竜兵が笑い抜きでいい感じを出しているのは新鮮な感じがしました。
敷かれたレールに乗り切れず挫折した主人公が、自ら自分のレールを敷き直す。しかも、まだどうにでもなれる青春の熱い思いみたいなものが上乗せされれば、よほどのことが無い限りそれなりに拍手をしたくなるというものです。
これも中島健人のアイドル映画と単純に切り捨てるのはもったいない。名作とまではいかないにしても、見て損はしない映画になっていると思いました。