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2024年11月11日月曜日

幕が上がる (2015)

青春根性ストーリーというのは、映画やテレビ・ドラマの題材としてはたくさんありますが、コメディ要素を廃して、真正面から女子高校生の成長を描いた作品です。

「現代口語演劇理論」の著書で有名な劇団「青年団」を主宰する平田オリザが2012年に発表した小説を原作とし、「踊る大捜査線」シリーズの本広克行が監督、自らも舞台俳優である喜安浩平が脚本を担当しました。

地方都市の高校の女子しかいない弱小演劇部の物語。秋の大会が終わり、2年生の高橋さおり(百田夏菜子)、橋爪裕子(玉井詩織)、西条美紀(高城れに)らは、さおりを新部長として始動しました。1年生は加藤明美(佐々木彩夏)、高田梨奈(伊藤紗莉)、村上舞(吉岡里穂)ら4人。

4月になって新入生勧誘のため、小舞台を行っても誰も見向きもしてくれません。袴田葵(芳根涼子)ら4人が入部したものの、さおりは、部長としてどうしたらいいのか迷うばかりだったのです。そして、演劇の名門校にいた3年生の中西悦子(有安杏果)が転校してきましたが、彼女は演劇から距離を取るのでした。

しかし、そんな彼女たちを見ていたのが新任の美術教師、吉岡先生(黒木華)でした。まずは自分自身の想いをそのまま語る「肖像画」という演劇をしてみたらどうかとすすめます。そして、さおりに見本を見せてといわれて、吉岡が自らを演じて見せると、さおりにとっては「神が下りてきた」ように感じさせるものでした。

吉岡が学生演劇で有名だったことを知った彼女たちは、吉岡に演劇の指導を願い出ます。さおりもしだいに演劇の楽しさがわかってきたのですが、秋の大会に向けてどうすればいいのかいまだに何も思いつかないでいました。

吉岡は、自分たちの本でやらなければだめだと言い、そのためにさおりが台本を書き、そして演出に専念するように進言します。さおりはプレッシャーで悩みをさらに深めていましたが、偶然中西さんと話をしているうちに「銀河鉄道の夜」を舞台にかけることを思いつきます。中西を何とか演劇部に参加させ、一気に書き上げた台本を使って稽古が始まるのでした。

主役には当時すでに人気を博していた5人組女性アイドル・グループのももいろクローバーZが起用されました。彼女たちは事前に平田オリザによる演技指導の特訓を受け、まさに映画を通じて女優として成長する過程が見事に描かれたことで、単なるアイドル映画を超えた高い評価がされています。

この映画では、地区予選で滑り込んだ彼女たちが地方大会に出場するところまでしか描かれません。その先には全国大会があり、彼女たちの目標は当然そこにあります。しかし、そういう結果よりも、何故演劇をするのか、そして付きまとう不安の正体は何かというところを深く掘り下げた内容が秀逸です。

この映画の後に、ほぼ同じキャストで舞台が上演されています。脚本は平田オリザが手掛け、演出は映画と同じ本広克行が担当しました。地区予選の後から始まる内容で、映画で描き切れなかった一人一人の心情に踏み込んだ内容になっています。DVDも出ているので、機会があれば、合わせて見ることをお勧めします。