クリニックを開業して丸3年が経ちました。石の上にも3年。桃栗3年。何でも、とりあえず形になるには3年かかるというわけで、本当に昔の人の言ったことは間違っていません。
開業コンサルトのせいにするわけではありませんが、当初の1年で黒字ですみたいな計画なんてのはありえません。そんな甘い話を鵜呑みにしたのは、自分の無知ということです。
今年の当直は昨日でお終いなんですけど、数えてみたら当直32回、日当直38回。病院にいた時間は1296時間、9時5時の勤務に換算すると週に3日勤務していたことになります。これは、自分でいうのも何ですけど・・・凄い!!
去年の総決算では、当直バイトを減らせるかなぁ、なんていうことを考えていましたけど、とてもとても。もちろん、クリニックは今年は何とか黒字を維持して経営的には最低限のラインはクリアしました。
開業にかかった借金の返済さえなければ、生活して行くには十分な経済的余裕がありそうです。しかし、借金返済まではあと7年間ありますからね。そして、これからが我が家では最も教育費がかかるのです。これを避けて通ることはできませんから、体力でカバーできる当直バイトは当分続けないといけません。
さて夏までは、まさに「とーちゃん、かーちゃんクリニック」を実践していましたが、少しずつ人を入れるようになったことは今年の大きな変化と言えます。患者さんが増えてきたので、さすがに数をこなせなくなってきたわけです。
とは言っても、1日の平均患者数は、やっと60人くらいというところですから、横浜市の平均70人くらいには及びませんし、全国的には100人以上というのが一般的な流行っている整形外科クリニックです。まぁ、逆にまだまだ増える可能性が十分にあるんだ、と考えたいと思います。
しかし、そうは言ってもなかなか増えませんね。この半年くらいで見ると1日の患者数は数人しか増えていません。横浜市都筑区内では整形外科を標榜するクリニックは、自分が開業した後にセンター北に一つ、センター南に一つ、葛が谷に一つという具合に増えてはいます。新しく開通した地下鉄の駅にまだできていないのが幸いです。
さすがに、この地域の異常な開業ラッシュは落ちってきたようです。しかし、昨今の医療事情を考えると、勤務医をやめて開業したいと考えている潜在的な候補者は山ほどいると考えられます。これから数軒の整形外科クリニックができるかもしれない、という覚悟は必要かもしれませんね。
となると、患者さんの獲得はますます厳しいことになっていくわけです。クリニックのスタッフを増やしていくのは、将来的なマンパワーとして確保しておく必要があるわけで、当初の足りなくなってから補充するから、足りなくなる前に補充していくという発想の転換が必要そうです。
診療内容としては、正直言ってそれほど商売人にはなれません。保険診療というのは、内容的に限界がありますし、また世間の厳しい経済情勢から患者単価はそうやすやすとは増えません。保険の枠組みのぎりぎりのところをついていくとか、医者としての信念を変えるとか、自分に負い目となるような方法はあとで必ず後悔しますからね。
自費診療部分を増やしていくことも考えなくはないのですが、整形外科ではあまり自費で売るようなものはありません。整形外科という枠を超える勇気がないと、なかなか難しい。いずれにしても、自費診療は当然リスクも伴うわけですから、まだまだ冒険できる状態ではありませんので、あまり考えないことにします。
従って、現状のクリニックの体制で可能なことに限界を感じ始めているというが、正直なところで、如何にして来年からの経営的な伸びを達成するかというのが、当面の大きな課題になっているわけです。
一番の専門性という観点から、来年の関節リウマチ診療についてはより一層の充実を図りたいと考えています。当然、今年新しく登場した薬剤についての一定の成果や安全性などもわかってきていますので、これらの治療法の適応を考えていきたい。
また、患者さんにはもう少しわかりやすく自分の状態を把握してもらうための方法を何か考えたい。本当は女子医科大学で行っている大規模な関節リウマチ調査(IORRA)に参加させてもらうことができると、いろいろと患者さんにもメリットがうまれるんですけどね。データの統一性の点から、なかなか難しいかもしれません。
地域の中では、老健施設への訪問、地域ケアプラザ協力医を継続していくことでより緊密さを作ることはもちろんですが、もう少し積極的な在宅医療への道も考えたいと思うわげです。もちろんマンパワー的には在宅支援診療所に名乗りを上げることはできませんので、既存の在宅診療所に整形外科的な専門性を提供するような形が考えられます。
そのためには医師会内での自分の認知度をあげ、他の先生方から積極的に依頼を受けていく方向性を明確にしていく必要があります。幸か不幸か来年も医師会の役員は続きそうなので、そういう部分を如何に出せるかを考えなければいけません。
あー、もう考えるだけならいろいろできますけど、実際にできるのかということとは別問題ですから、理想と現実のギャップは深い深い溝になって横たわっていますね。
医療は景気には左右されないと言われてきましたが、このところの急激な不景気はさすがに医療にも影をさしはじめているようです。この数年散々緊縮傾向の政策で痛めつけられた医療業界には、いざというときの体力が残されていません。
一層のコスト削減という収縮基調と、こういう時だからこその増患という拡大基調を同居させつつ・・・・頭はもうこんがらがっています。という、なかなかしっかりとした方向性が見いだせないで2008年は終わろうとしているわけです。