幼児期からピアノやバイオリンの稽古事にがんばった人をのぞくと、たいてい小学校の音楽の時間の音楽鑑賞が、クラシック音楽との最初の出会いということになるんでしょうね。もちろん有名曲を聴かされて、一般教養を深めることになるのですが、小学生にとってはいささか退屈であることは否めません。
自分もそんな少年であったわけですが、ちょっと違ったのは友人に音楽好きがいたこと。彼はクラリネットを習っていて、河合楽器に通っていました。彼についてお店に行くと、レコードを2割引で購入できるのが大きい。そのうち顔を覚えてもらえて、一人でもまけてもらえるようになりました。
その友人は音楽の趣味も幅広くて、カーペンターズ、サイモン&ガーファンクル、ビートルズなどの洋楽とそして、クラシック音楽を教えてもらったのです。
当時は、いわゆるレコードプレイヤーといっても、カステラの箱みたいな大きさで、本体に付属のスピーカーから音を出すので、せっかくのステレオ録音でもモノラル再生しかできません。
ところが、その友人の家に行くと、いわゆる最新のハイファイセットと呼ばれた両側にスピーカーを配置した畳一畳分はあろうかという装置があって見事に立体的な音楽を聴くことができたのです。
そんなわけで、今でも記憶に残っている最初に曲名を覚えたクラシックはモーツァルトのクラリネット五重奏曲だったわけです。でもって、自分でも買ってみました。
カザルス音楽祭のライブで演奏者は覚えていませんが、一緒に入っていたのが誰でも知っている「アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク」。なんか念仏みたいと思っていましたが、後にこれが単にドイツ語で「一つの小さな夜の音楽」というだけの意味だったと知ったときは、けっこう驚きました。
モーツァルトの膨大な作品群の中では、この曲は屋外での園遊などで娯楽のために演奏されるセレナーデという位置づけなんですね。同じく室内で演奏される物がディヴェルティメントと呼ばれ、モーツァルトの作品のかなりに関わっています。
編成も数人からオーケストラ規模まであり、様々の形態があってバラエティにとんでいるので、とにかく無条件に楽しい音楽なわけです。これのCDもいろいろありますが、うちにあるのはサンドール・ヴェーグが指揮するザルツブルク・モーツァルテウム・カメラータ・アカデミカの演奏集です。
モダン楽器による小編成オーケストラですから、重苦しくなくたいへん爽快にきびきびした演奏を聴かせてくれます。ヴェーグはシフのモーツァルト・ピアノ協奏曲で主役のピアノよりも伴奏が大変評価されているようです。
もともとバラバラに発売されていたのですが、BOXで安く手に入れました。残念ながら今は廃盤になっていて入手できないようですが、ばら売りのものはまだ手に入りそうです。
ヨーロッパの貴族がなにげに広大な庭を散策している横で、数人の楽士が演奏しているような光景が目に浮かんできます。今ならiPodを持ち歩けばいいんでしょうけどね。