J.S.バッハのゴールドベルク変奏曲は、最近の自分のクラシック嗜好の原点みたいなもので、お気に入りの楽曲です。当然Glenn gouldの弾くピアノ演奏については、もう自分にとってのスタンダードとして確固たる地位を持っているわけで、他の演奏を聴く場合はそこから比較しないわけにはいかないのです。
そういう意味で、ピアノ演奏によるものはどうしても不利かもしれません。しかし、幸いというか、バッハはこの曲の使用する楽器を指定しなかったわけです。もちろん、当時のことですからチェンバロを想定していただろうということは容易に想像がつくわけで、当然Gouldのモダン・ピアノによる演奏はバッハの想定外ではあるわけです。
そんなわけで、いろいろな演奏家がいろいろな楽器で演奏しているのもゴールドベルク変奏曲の楽しみの一つなんですね。ピアノ、チェンバロ、ギター、オルガンなど、興味は尽きません。
さて、最近発売された新譜・・・たまには廉価盤ばかりでなく新作も買うんですけどね、ハープによるゴールドベルク変奏曲なんです。演奏しているのはカトリン・フィンチ、ちょっときれい系のイギリス人。
1980年生まれだそうですからまだ20代ですが、英国国立ユース・オーケストラの首席ハープ奏者つとめたり、英国皇太子の専属ハーピストになったりと大注目の方のようです。
鍵盤楽器用のゴールドベルク変奏曲は、さすがにそのまま演奏するわけにはいかないようですが、自らハープ用に編曲するというところがすごい。
弦をはじくハープの音色は違和感はなく、むしろ柔らかくなったチェンバロの響きという感じで、暖かみがぐっと増します。また、チェンバロと違って強弱がつけられるところも、曲調のバリーエーションの幅を広げることに有利なようです。
全体を通して、やや繰り返し部分が多いように感じましたが、テンポがよくだれません。ちょっと気合いを入れて聴くには甘すぎるかもしれませんが、なかなか気持ちのよい好感の持てる演奏になっています。