リウマチ患者さんと骨折は、なかなか切っても切れない。
今日は、もうかれこれ大学以来10年近く診察させていただいている患者さんが骨折をしてしまいました。足の付け根の骨折で、基本的に手術をするしかないので、すぐに入院先を手配しました。
その前は2年前、別の患者さんで腕と足の骨折。けがのない手足も変形があるので松葉杖を使うことができません。
状況によっては、歩けなくなって寝たきりになってしまうかもしれないわけですから、健康な人が骨折するのに比べて深刻度は高い。
まずは、関節の変形などがあると不安定性が出てきたりして、転んだときなどにぐらぐらして体重を支えられずに骨折をしやすい。
また、いろいろな変形があると、どうしても十分な運動ができませんから、筋肉も弱くなり、骨も萎縮していますから体を支える力がさらに少ないと言えます。
そして、薬。痛みを効率的に取り除くためにしばしば副腎皮質ステロイドが使われますが、その副作用で骨が弱くなる、いわゆる骨粗鬆症(こつそしょうしょう)が進みやすい。
そもそもリウマチの変形というのも、ある意味では骨折の結果なのです。リウマチ関節の中では炎症を起こした組織が増えて、そこから骨をいためる物質が出てきています。そして、骨の中に炎症組織が入り込んでいくわけです(パンヌスと言います)。ちょうど酢の入った豆腐みたいな状態を想像してみてください。
そこに力がかかると、弱くなった部分が陥没するようにつぶれてしまいます。これが一種の骨折なわけですが、レントゲンで逐一確認できるようなレベルではなくミクロの世界のことなのです。しかし、ちりも積もれば山となるで、いつしか見た目にわかる変形へとつながっていくわけです。
なんにしても、通常の骨折の治療と比べると、リウマチの患者さんの骨折は、状態によってはいろいろと考慮すべきことが多いので大変です。
骨質が弱いので、通常の手術方法では骨折部を固定できないかもしれません。あとのリハビリも松葉杖が使えないため時間がかかるかもしれません。リウマチの変形も合わせて考えて治療法を選択しないといけない場合もしばしばあります。
ですから、できるだけ骨折をしないためにも、痛みを我慢するというのはあまり解決にはならないわけで、できるだけ日常生活の力を減らさないようにすることが大切なわけです。