2009年6月24日水曜日

整形外科リウマチ医

抗リウマチ薬というのは、はっきり言って怖い薬です。怖い、というのは副作用で死亡するような患者さんが出るかもしれないということです。

だからと言って、薬を否定しているわけではありません。抗リウマチ薬の効果によって、多くの関節リウマチの患者さんが恩恵を被ることができるのは紛れもない事実なのです。

自分は整形外科医の立場から診療を行っているので、手術のような方法論に傾きがちと思われるかもしれませんが、整形外科医としては残念ながら関節リウマチはすでに整形外科領域の病気とは言えません。

過去には、薬の効果が期待できず、多くの変形に対処するため外科的な治療というのは大きな意味を持っていました。しかし、21世紀に入って大きな進歩によって薬剤による治療は大きく変わりました。

関節リウマチの患者さんの手術件数はどんどん少なくなっており、特に新しい患者さんでの手術は激減していると言えます。

現在広く使われるようになってきた生物学的製剤と呼ばれる新しい薬では、骨破壊の抑制あるいは場合によっては修復も期待できるのです。

遺伝子レベルでの治療が一般化してくれば、基本的には整形外科医が必要とされる場面はごく限られた物になると予想することは容易なことです。

しかし、ここで考えないといけないことは、病気は患者さんの中で起こっているということです。テレビ風に言うなら、「リウマチは試験管の中で起こっているんじゃない。患者さんの関節の中で起こっているんだ」と言う感じでしょうか。

ここに内科系のリウマチ医に対する整形外科医の優位性があります。手術を通して、腫れた関節というのが実際にはどういう状態なのかを肉眼で確認してきたことは、大きな強みだと思います。

また、骨破壊が進行することにより、関節周囲の靱帯などの弛緩から起こる不安定性などの問題を合わせて考慮できるのは整形外科医しかありません。

また、適切なサポータやリハビリテーションの指示を出すのも整形外科医の大事な役割なのです。ですから手術が減ったとしても、これからも整形外科医は積極的に関節リウマチという病気に関わっていかねばならないと考えています。

ですから、最初の文章に戻って、抗リウマチ薬をしっかりと理解して使いこなすことが必要になります。大変怖い薬を使うという覚悟を持つことが大切で、いい加減な使い方をするならリウマチ診療に手を出してはいけません。

たまたま、ある整形外科で「とりあえず飲んでみてください」と言われて不安になった患者さんと普通じゃない服用の仕方を指導された患者さんを診察しました。

抗リウマチ薬はとりあえず飲んで様子をみてみようというような気楽な薬ではありません。処方するならそれなりの確信が必要だし、飲む側にも覚悟が必要です。中途半端な内服をすることは副作用のリスクを一気に高めることになり、正しい服用を指導することは大変に重要なのです。これからも関節リウマチの診療に深く関わっていくためにも、整形外科医はしっかりと勉強をしていかないといけません。

保険診療という枠組みは大変に制約が多く、しばしば理想的な診療を行えないことがありますが、薬物療法・装具療法・手術療法・リハビリテーションなどの使えるものをバランスよく利用してできる限りの治療を行っていかなければならないと考えています。