先月からはまっている木管楽器によるアンサンブル。エルガー、ベートーヴェンときて次第に古くなって次はモーツァルトです。
実際のところ、バロック・古典までの作曲家はそれなりに使っていたフォーマットですが、演奏会の形式が変わったことでこのジャンルは衰退しました。
つまり金持ちの貴族の屋敷の中でプライベートに音楽をBGMあるいは娯楽として楽しむという形から、演奏会場に出かけていって音楽そのものを聴いて楽しむという形に変わっていったわけです。
そこには興業としての付加価値が必要になってくるので、できるだけ多くの聴衆を集める必要が出てくるわけで、当然音の小さな楽器は必要度が減ってくるわけです。
またフランス革命以降、貴族の資金力が低下して、作曲家のパトロンとしての力も無くなってきたため、作曲家は貴族に取り入ることから、楽譜の出版や演奏会の開催などによって収入を得ることにシフトしていきました。
さらにベートーヴェンにより、音楽の娯楽性よりも芸術性が高められ、木管アンサンブルは貴族を楽しませるものとして低く見られるようになったのではないでしょうか。モーツァルトの時代には、もちろん貴族のパトロンは必須で、モーツァルトは彼らに取り入ることが生きていく上での重要事項であったわけです。
セレナードというジャンルは、そういう貴族を喜ばせるために小編成楽団によって主として屋外の夜会で演奏された軽めの音楽のことをいいます。そういう情景から、現代では恋人向けの甘い音楽としての性格が残っているわけです。
一方、ディヴェルティメントは同じく貴族が楽しむための室内で演奏される音楽のことで、このあたりはまさに楽しくなければ音楽ではないくらいのものです。モーツァルトはいろいろなジャンルで多作家でしたが、この分野も大変作品が多い。
主として弦楽を中心としたものとしては、「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」はおそらくクラシック界きっての人気曲で、まず聴いたことが無い人はいない。すでにヴェーグ盤を紹介をしましたが、これで全部のような気になっていました。
木管中心のものはやや陰が薄かったのですが、映画「アマデウス」によって「グラン・パルティータ」が一気に有名曲になった感があります。あらためて、眺めてみると木管を無視してはモーツァルトのこのジャンルを制覇することはできません。
木管楽器のアンサンブルとしてはベルリン・アンサンブルが有名ですが、いろいろな作曲家を網羅的に録音しているグループとしてConsortium Classicumも有名。ベートーヴェンで縁ができたので、彼らのモーツァルトを探してみました。
このアルバムはCD7枚でcomplete盤ということで、是非とも手に入れたい。ただHMVではすでに取り扱っておらず、現状では廃盤のようなのです。そこで、今回はAmazonのお世話になりました。このアンサンブルは、もうひとつ"Mozart ?"と対するアルバムがあり、こちらではモーツァルトの贋作・偽作・疑作などを集めたマニアックなセレクションが興味深く、両方をまとめて聴いてみたいわけです。
実際のところ、大変楽しい。文句なし。ただでさえ聴いていて気持ちの良いモーツァルトですが、ここまでくれば完璧です。ただ、次第に衰退したジャンルであるということを何となく実感できるのも否定できない。
ベートーヴェンは一つ一つに楽器編成を変えたりしてバリエーションが感じられましたが、モーツァルトの場合は全部同じ。う~ん、究極のBGMとしては最高ですが、さすがに真剣に聞き続けるのはつらいかも。
実は、モーツァルトよりちょっと古いハイドンのものも手に入れたのですが、このフォーマットの掘り下げはここまででよいかもしれませんね。