MRI検査というのは、ずいぶんと普通の検査になったものです。MRIというのは、Magnetic Resonance Imagingの略。そのまま直訳すると、磁気共鳴画像ということなんですが、もともとはNMRと言っていて、頭にNuclear、つまり「核」という言葉がついていたんです。
正確には核磁気共鳴と言って、時期の影響で分子の核が励起状態となり、戻るときの放出エネルギーに外から別の周波数の磁場をかけて共鳴状態をつくり・・・
う~ん、正直に言ってその原理をよく理解していません。学生の頃にはこの検査は無かったので、授業で教わったことが無いんです。医者になった年に、大学で日本で何台目かの検査機器を導入したんです。
研修医で放射線科をローテーションで回ったときに、チーフの先生から「君は整形外科だから、MRIを知っておかないといけない」と言われ、英語の教科書をわたされ、訳して他の研修医に説明するようにいわれて真っ青!!
当然、まだ日本語の本なんて、まったく無い時期です。今まで聞いたことも無いような、しかも、ほとんど物理学(ひぇ~)の本を訳して来いなんて、無慈悲にもほどがあるってもんです。
まぁ、おかげで、多少はわかったような気になって・・・所詮、あくまでも勘違いですけどね。確かに、整形外科は早くからMRIの恩恵を受けた科でしたから、今となってはMRI無しなんて考えられないような状況ですからね。
整形外科が偉いところは、自分で言うのもなんですが、MRIという新しい「武器」を手に入れたことで、古い検査法を処分したことです。世の中には、新しい検査が出てきても、検査が増えるだけで、患者さんの負担だけが増えるということは珍しくありません。
関節造影と脊髄造影という、それまで整形外科にとって最も重要な検査法が、ほぼMRIにとってかわられるようになりました。今ではよほどのことがないかぎり・・・つまり何らかの理由でMRI検査ができないような場合を除いて、することはありません。
医者になって5年目くらいまでは、必死こいてやっていた検査ですが、たぶん90年代半ばくらいを最後にやった記憶がありません。とにかく、現在では単純レントゲンとMRIがあれば、整形外科の画像診断はほぼ9割がた足りてしまいます。あと、ごく一部でCT検査と超音波ということになるでしょうか。
時代の進歩というのは、いろいろな方法論を刷新していくわけで、医者としてそれについていくというのはけっこうなエネルギーを必要とします。自分も年を取ってきたので、この先大きな変革があったらついていけるか心配になってきました。