さて、ちょっと古いものを前回紹介しましたが、じゃあ、新しいところだったらどうなのよ。そういう疑問が出るのは当然・・・でもないかもしれませんが、勝手に答えを考えた。
ハンガリーの名手というとミクローシュ・ペレーニ。もちろん新進気鋭というわけではなく、もう大ベテランでして、かなり前にベートーヴェンのチェロソナタ全集をすでに出している。
そのペレーニが21世紀になってから、新たに同じハンガリー出身の名ピアニスト、アンドラーシュ・シフと組んで録音したセットがあります。これが、すごくいいわけです。
ヘレーニの音色は慈愛に満ちているというか、とにかくやさしい。モダン・チェロを使用しているのでしょうが、響きのよい古楽器でも使っているかのようです。そして、何しろ音色がぶれずに、かつきっちりとした音程を維持するところはさすがです。
チェロ・ソナタとは言っても、ベートーヴェンのものはチェロとピアノのからみがポイントで、ピアノがただの伴奏になっていないところがすごい。
ですから、シフは同郷の大先輩に対して、しっかりと尊敬の念をもって接しているわけで、引くところはしっかりと引き、出るところは堂々と出てくるあたりのバランスが絶妙です。
ところで、このCDを出したのはECM。ECMと聞くと、普通はジャズのレーベルであることが思い出され、昔から大変クリアな音色の録音には定評があります。また、ジャズと一緒でクラシックに進出してからも、比較的モダンなアンサンブルを中心に独特なムードを持っている。
シフはもともとデッカと専属契約していて、クラシックの王道を行く録音を多数残してきました。そのシフがECMと契約して今回のような、古典的クラシックを作るというのは、ECMにとってはある意味相当な覚悟があるんでしょう。
やはり、キース・ジャレットのなんとも中途半端なバッハのシリーズではダメと思ったのかもしれません。シフはこれ以外にも、すでにバッハ、シューマン、そしてベートーヴェンのソナタ全集も製作しており、過去以上に注目作を立て続けにリリースしており、なかなか目が離せません。