音楽の嗜好についても同じことで、次から次へと出てくる新しいものを追っかけるのはしんどい。すでにお気に入りになっている、アーティストだけで十分足りてしまう。
何年か前から、特に積極的に聴こうとは思わなくても、メディア露出が増えて自然と名前だけは知るようになったのがSAKANACTIONですが、これは何と言ってもバントの名前のユニークさの賜物だと思います。
こういうネーミングのセンスは嫌いじゃない。ストレートに誰それバンドとかいうのも悪くはありませんが、インパクトには欠ける。SAKANAといえば、当然「魚」を想像するし、いったいどんな音楽を作り出すのか興味が湧きます。
最新曲は「忘れられないの」という曲で、これは数十年前の、自分にとってはリアルタイムですが、今の若者からすれば懐かしさを感じるよりも古いスタイルにこだわったという曲。
確かに昭和人には受け入れやすいメロディで、じゃあ新しいこだわりのアルバムが出たというので、聴いてみようかということになった。
タイトルの「834.194」は、彼らの出身地の札幌から東京までの距離だそうで、このあたりにもバンドメンバーのセンスを感じます。
一曲目こそキャッチャーな「忘れられないの」ですが、以後は独特の世界が続きます。韻を踏んだ歌詞は、ちゃんとメロディのあるラップという感じ。そして、何よりも演奏がしっかりしているという印象を持ちました。
最新テクノロジーをふんだんに散りばめていますが、そこに飲み込まれない生身のミュージシャンの姿がしっかりと描かれています。
全体的には受けのいいサビというのは少ない感じがして、硬派な印象です。でも、ここぞというときに耳に残るメロディをスパッとだしてくるあたりは、楽曲の構成力の強さも併せ持ってます。
こうやって、時々新しいものにも首を突っ込むと、たまに彼らのような面白い発見があって、気持ちが刺激されるのは年寄りにとって悪い事ではありません。