どんな楽器でもジャズでは使われる可能性があるんですが、オルガンの場合はほぼ代表的な演奏者はジミー・スミスの一択というところ。
ロックの世界ではキーボード奏者が使う楽器としてスタンダードともいえる、ハモンド社製のオルガンを一躍有名にした立役者です。ちなみにマイケル・ジャクソンの「BAD」におけるオルガンはスミスによる演奏。
50年代にBlue Noteで頭角を現し、60年代以降はVerveの大衆化路線に乗って人気を博しました。ジャズ的なグルーブを目いっぱい感じるのはBlue Note時代ですし、「The Sermon (1957)」は一般に代表作として挙げられています。
ただし、自分の場合、最初に聴いたということもあって、最大のヒット作である「The Cat」のほうが馴染み深い。ジャケットの狙いを定めるような黒猫も印象的。
初期の演奏では、オルガンの音がにじんでいるようなものが多く、またオルガンが合わせて担当しているためベースレスが多く、メリハリに欠ける感じがしてしまいます。
その点、このアルバムは、まさに60年代アメリカのサスペンス映画音楽のような、オルガンとダイナミックなオーケストレーションのバランスがマッチした佳作で、ロック・ファンにもしっかりとアピールする内容です。
ただし、8ビートの普通のジャズののりはここにはなく、いわゆるジャズ・ロックと呼ばれるもの。純粋なジャズ・ファンからは、大衆に迎合した堕落した作品として低く見られているようなところがあります。
このあたりは、ジャズのポップ化の立役者であるプロデューサー、クリード・テイラーの功罪の一つなのかもしれませんが、少なくともこのアルバムではオルガン音楽の世界としては成功しているように思います。
こういう音楽も含めてジャズの醍醐味であるアドリブの楽しさが伝わってくる点では抜群の内容。これをとっかかりにして、より純ジャズ的なものに入っていくのがお勧めです。
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