2020年8月26日水曜日

Ella Fitzgerald / Ella in Berlin (1960)

エラ・フィッツジェラルドは、ビリー・ホリディ、サラ・ボーンとともに女性ジャズ・ボーカルの黒人御三家の一人に数えられます。

正直に言うと、ホリディは魂の歌唱としてそのすごさを認めるものの、声はガラガラだし必ずしも歌唱力として優れているとは云い難い。悲劇的な人生による伝説化が、その評価に多くの上乗せを許していることは否定できません。

エラも様々な苦しい人生経験を積んだ人で、晩年も糖尿病で視力を失い、さらに両下肢切断し引退を余儀なくされており、私生活では幸せを満喫した人ではありません。

自分が知ったのは70年代で、すでにピークを過ぎて視力も低下していた頃だと思いますが、いかにもでぶったオバちゃん体形なんですが、意外と可愛らしい声で歌い飛ばす感じが良かったと思いました。

代表的なアルバムは、かつてのアメリカ有名作曲家の曲を集めた「Songbook」シリーズが有名ですが、歌を残すことに集中してジャズとしての面白みはやや下がります。

その点、この「イン・ベルリン」はライブで、エラ節全開で、わずか36分、全9曲ですが、ジャズ・ボーカルの楽しさが十二分に伝わってくる。今は4曲追加された完全盤で、さらに楽しさ倍増しているものが手に入ります。

伴奏はポール・スミス・クァルテットですが、このポール・スミスというピアノについては情報量が少なくてよくわかりません。むしろ、ギターで参加しているジム・ホールに注目が集まります。

この短い時間の中で、いったい何回「Thank You」を言うんだろうというくらい、テンション上げて歌う事を楽しむ、そしてその楽しさを伝えたいエラの気持ちがひしひしと伝わるボーカル・アルバムです。