エリック・ドルフィーというと、有名なコルトレーンのヴィレッジ・バンガード・ライブがありますが、当初の正規盤では、ドルフィーのソロは大幅にカットされていました。後に完全盤が登場して、その時にコルトレーンを凌ぐ大暴れぶりが話題になりました。
何しろ遅咲きで急逝したため、活動期間が短い。にもかかわらず、マルチ・リード奏者の先駆けで、アルト・サックス以外に、バス・クラリネット、フルートなどでも卓越した才能を発揮しました。
30才になった1958年から頭角を現し、チコ・ハミルトン、チャーリー・ミンガスのグループを経て1961年のコルトレーンの元でブレイク、1964年にヨーロッパ・ツアー中に糖尿病・心臓病のために客死。
死後、すぐに発売された「Out to Lunch (Blue Note)」が一般的には代表作とされますが、自分の場合は、無くなる直前の6月2日にオランダで収録されたこのアルバムが最初の出会い。まだジャズをかじり始めた高校生の時で、とにかく何かすごいと感じた記憶があります。
18日後に36才の誕生日を迎え、その9日後には亡くなるなんて誰も予想していなかったわけですが、ラジオ番組用のライブとして作られたため最後にドルフィの肉声が収められ、まさに最後を飾るにふさわしいアルバムとなっています。
“When you hear music, after it’s over, it’s gone in the air. You can never capture it again. ”
聴き終ると、その音楽は空気の中に消えて二度と聴くことはできない・・・・まるで、遺言のような名言です。音楽は、演奏者の気分・体調、演奏する場所、そして聴く者の側によっても刻一刻と変化する生き物のようなものということを言いたかったのだろうと思います。
全て現地のミュージシャンとの共演ですが、レギュラー・グループのようなまとまりがあり、当然これが最後のアルバムになると本人は思っていないわけですが、音楽に対する一瞬の集中力は高く、まさに名演・名盤と言えます。
フリー・ジャズへの傾倒が始まっていた当時のドルフィですが、ここではラジオ用、かつ現地メンバーということもあってか、ジャズのフォーマットが濃い目に残っているため、ドルフィ最初の一枚としても聴きやすいと思います。