フィニアス・ニューボーンJrは、ジャズ・ピアニストのタイプとしては、オスカー・ピーターソンに似ていて、超絶的な技巧を有して、強くて速い打鍵力を持っています。
本来なら、もっとメジャーになるべき人だと思うんですが、精神疾患のため入退院を繰り返し、活躍が断続的になったため、ジャズ界の中で忘れがちな存在であることが、実にもったいない。
時には速くて大量の音数で聴く者を圧倒し、また時には優雅な情感たっぷりで人の心を引き込むところは、本当にすごいところで、ジャズ・ピアノとして「これを聴かずに語るな」みたいなところ。
限られた録音の中で、1974年のソロは、純粋にフィニアスの独特なピアノ世界を端的に表している傑作なんですが、ある意味マニアック。比較的誰でも、フィニアスのジャズを身近に感じられるのは1961年のこっちの方でしょう。
何しろ、リズム隊がポール・チェンバース、フィリー・ジョー・ジョーンズ(一部)。もうどんなソロイストが来ても、完璧にサポートして名盤請負人として間違いない。
収録曲は、ジャズ・オリジナルばかりで、今ではスタンダードになったものばかりが集められ、歌物と違って器楽曲として演奏者のテクニックが遺憾なく発揮できるものばかり。
のりの良いスリリングな演奏は、息をのむような素晴らしさで、十分な歌心もしっかり盛り込まれた名作です。