世界に標高8000mを超える山は14座あり、それらはすべてカラコルム~ヒマラヤ山脈に存在します。一番西から東に名前をあげていくと、
1 ナンガパルバット (8126m)
初登頂 1953年、登頂者数---人、死亡率20.3%
2 K2 (8611m)
初登頂 1954年、登頂者数306人、死亡率26.5%
3 ブロードピーク (8047m) K3
初登頂 1957年、登頂者数---人、死亡率5.2%
4 ガッシャブルムII峰 (8035m) K4
初登頂 1956年、登頂者数---人、死亡率2.3%
5 ガッシャブルムI峰 (8068m) K5
初登頂 1958年、登頂者数---人、死亡率8.7%
6 ダウラギリ (8167m)
初登頂 1960年、登頂者数---人、死亡率15.4%
7 アンナプルナ (8091m)
初登頂 1950年、登頂者数191人、死亡率31.9%
8 マナスル (8163m)
初登頂 1956年、登頂者数---人、死亡率9.8%
9 シシャパンマ (8027m)
初登頂 1964年、登頂者数---人、死亡率8.3%
10 チョオユー (8201m)
初登頂 1954年、登頂者数3000人以上、死亡率1.4%
11 エベレスト (8848m)
初登頂 1953年、登頂者数5600人以上、死亡率3.9%
12 ローツェ (8516m) 別名エベレスト南峰
初登頂 1956年、登頂者数---人、死亡率2.8%
13 マカルー (8463m)
初登頂 1955年、登頂者数---人、死亡率8.6%
14 カンチェンジュンガ (8586m)
初登頂 1955年、登頂者数---人、死亡率14.1%
この中で、特に気になるのは、通常の呼び名が無いK2です。Kはイギリス統治時代のインド測量局が19世紀後半につけたカラコルム測量番号というもので、K2は第2号ということ。死亡率ではアンナプルナが上回りますが、K2も登山者の4人に1人が亡くなっており、14座の中でも屈指の難易度を誇ると言えます。
かなり奥地の秘境にあり、パキスタン側からしか登れませんが、それでも急峻な斜面と頻発する雪崩の危険が高く、頂上に立っても下山中に死亡するケースも多い。一度に10人以上の大量遭難も度々起きています。
この映画は、K2を舞台にしているフィクションですが、テーマは性格が対照的な主人公二人の友情であり、あくまでも登山はその背景というところ。監督はフランク・ロッダム、パトリック・マイヤーズの戯曲が原作で、マイヤーズは脚本にも参加しています。
テイラー・ブルックス(マイレル・ビーン)は弁護士で、基本的に好きなことを好きなようにやるタイプ。一方、学者のハロルド・ジェームソン(マット・クレイヴン)は、愛する妻と生まれて間もない息子がいて、家庭を大事にしている。テイラーとハロルドは、登山という共通の目標があり、二人で何度も山に挑戦をする絆で結ばれています。
次の目標に向けて二人がアラスカの岩壁でトレーニングをしていると、登山家として有名なフィリップ・クレイボーン(レイモンド・バリー)らのチームと遭遇。偶然発生した雪崩にクレイボーンのチームは巻き込まれますが、テイラーとハロルドによって、クレイボーン、ダラス(ルカ・バーコヴィッチ)、タカネ(藤岡弘)、ジャッキー(パトリシア・シャーボノー)は助け出されます。
しかし、チームの二人を失ったクレイボーンの目的がK2登頂であることを知ったテイラーは、欠員の補充に自らを売り込み、ハロルドも妻の反対を押し切って参加することになります。しかし、チームとしての和を軽んじるテイラーとダラスは衝突するのでした。
ベース・キャンプからさらに登る途中、クレイボーンは高山病を発症し、しかたがなくジャッキーに連れられてキャンプに戻る。クレイボーンはダラスとダラスが選んだ者に頂上アタックを託すのです。テイラーは自分を連れて行けとダラスに迫りますが、ダラスはタカネを連れて行きました。
残された二人は険悪なムードになる。ハロルドは、自分を置いて一人でダラスについていこうとしたテイラーを非難するのです。そこへ、瀕死のタカネが戻ってきてダラスが死んだと言い残して息を引き取ります。テイラーとハロルドは、あらためて頂上を目指して出発し、山頂に到着することに成功しました。
しかし、下山の途中で天候が悪化してきて、二人は氷壁を滑落してしまい、ハロルドは下肢を骨折して動けなくなってしまうのです。ハロルドは、自分を置いてテイラーだけでも生還してくれと強く頼みます。一度は一人で下山し始めたテイラーでしたが、途中でダラスの遺体を発見し、ダラスのロープや装備品を貰ってハロルドの元に戻るのでした。
この映画の日本での権利はとっくに消滅しているらしく、今では英語版のDVDしか手に入りません。ただ、ネットは便利な物で、映像そのものはストリーミングで見れたりします。また、字幕も英語の物は手に入るので、何とか内容は理解できるというもの。
仮面ライダーの藤岡弘が出てくるのも興味深いのですが、台詞はほとんどありませんし、画面の中心に映るのも最後の死ぬところだけ。すでに「ターミネーター」や「エイリアン2」で人気者だったマイケル・ビーンの、利己的ですが目一杯明るいキャラが目立ちまくっています。
テイラーは、初めはハロルドに「愛は高くつくからいらない(束縛される)」と言い切っていましたが、ハロルドが自分を捨てて助かれと言うと、友を死なせた残りの人生なんて意味が無く、実は自分もハロルドのように愛を手に入れたいということを悟るのです。公開時のキャッチフレーズは「エゴで登り愛で下りる」だったそうで、まさにそういう人間ドラマがうまく積み上げられている感じです。
登山のシーンも、かなり本格的で登山愛好家の人たちからも、高く評価されています。ヒマラヤでのロケが入り、かなり実際に近い映像が素晴らしい。とは言え、さすがにK2に登るわけにはいかないので、雪山のシーンはカナディアン・ロッキーの山中で撮影されています。